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 ツェペシュの儚き幻想



≫第一章


「あれ、これは───」

それはある日の紅魔館の図書館でのこと、
司書である小悪魔はあるものを見つけた。
埃がかぶったそれは、どうやら年期の入ったものらしく、所々に染みが付いていた。

「パチュリー様、これは……?」

ある"本"を抱え、小悪魔はパチュリーの元へ向かう。
図書館の主とも言える知識人は机に向かって魔術関連の本を読んでいた。
辺りは既に夜の闇で真っ暗、所々に点在するランプとパチュリー様の書斎のランプで図書館は闇に包まれず、
本も傷まず、多少薄暗くも最高の環境を作り出していた。

「パチュリー様」

紫の髪をし、三日月の髪留めを付け、薄紫のローブに纏った彼女は百年以上も生き続けている魔女。

「二回も呼ばなくていいわ。 ……どうしたの?」

小悪魔は抱えていた本をパチュリーに見せた。
その本を見てパチュリーは一瞬、眉が上がった。……ような気がした。

「あの、これは……?」
「この本……、というより日記かしらね」

懐かしむようにパチュリーは日記の表紙を撫でた。
表紙に文字が書かれていたが、本が痛んでおり、なんて書いてあるか小悪魔には読めなかった。

「パチュリー様、その日記は誰のなんですか?」

それは、少しの好奇心。
日記というなら、誰の?と聞いてみるのか人の性だ。
……まぁ、人ではないのだけれど。
パチュリーは少し考えて、一度その日記に一瞥した。
そして小悪魔の方に視線を移す。

「そうね、その前に……」








「貴女に昔話をしてあげるわ」




───それはまだ、紅魔館が幻想入りする前の頃。




紅魔館には色んな人達がいた。 当時は忌み嫌われた魔女、魔法使い、行き場を無くした人間も紅魔館にはいた。 「賑やかでいいじゃないか」 それは、この紅魔館の主が受け入れていたからだった。 主、スカーレット伯爵はそんな人達を介抱した。 人種差別が酷かったこの時代、差別せず受け入れていたのはスカーレットしかいないぐらいだった。 スカーレットにも二人の娘がいた。 蒼い髪をした長女、レミリア 金色の髪をした次女、フランドール 娘が産まれたとき、、スカーレットは喜んだ。 館の皆も新しい生命の誕生に喜んだ。 「フランドール……?」 しかし、レミリアの後に産まれたフランドールは目を覚まさなかったのだ。 だが息はしており、"生きて"はいた。 「……でも生きているんだ」 伯爵は暗い雰囲気の中、皆を勇気づけた。 本当は伯爵が一番、つらいはずなのに。 それから何十年後、いやもっとかしら、 私、パチュリー・ノーレッジが産まれた。 そして目を覚まさないフランはベッドに寝かせられ、伯爵と一緒に寝ていた。 やはり我が子がやはり愛しいのか、娘二人と寝る伯爵は幸せそうだった。 レミリアもフランも段々成長してきた。 それから何年か後の事だった。 「貴女、本読んでて楽しい?」 ───それがレミリア・スカーレットとの出会いだった。
ソファで本を読んでいたら蝙蝠の様な翼をもった蒼髪の少女に、声をかけられた。 大人に囲まれての生活だっただけに、少女から声をかけられたという事に上手い切り返しが思い付かなかった。 「まあ、一応」 考えた末に、こう言った。 一方少女は、ふうんと言うと隣の席に座り、本を覗き込んだ。 ……仕方ないので、本に視線を落とす。 ページを捲り、本の続きを読む。 「活字ばっかりね……」 数分後、少女はそう言った。 私が見るに、彼女は絵本ぐらいしか読んでなさそうだ。 「そう言えば」 今思えば、まだこの少女は誰なのか知らないでいた。 「貴女は誰かしら?」 「まさか館の中で自己紹介するとは思わなかったわ。私はレミリア、レミリア・スカーレットよ」 ソファからおりて、胸を張りながらレミリアは言った。 それに私はふーんと答え、また本の方に視線を落とした。 「いやいや、自己紹介したんだから貴女もしなさいよ!」 相手の意外な行動に慌てて、レミリアは言った。 「私?」 「そう貴女」 スカーレットの娘が私に指を指した。 私は面倒ながらも、自己紹介をした、……初めての自己紹介だったかもしれない。 「私はパチュリー・ノーレッジ。……趣味は読書よ」 「パチュリーね、分かったわ」 そう言うや否や、私の右手を握った。 「よろしくね、パチュリー」 顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべたレミリアがいた。 その笑顔につられて、私は自然と笑顔になった。 「……うん」 こくり、と頷きレミリアの手を握り返す。 …………私と同じくらいの少女の手は、 ――私よりも、強く、暖かった。 それから、彼女と親しくなるまで時間はかからなかった。 レミリアは毎日私の元に来たからだ。 「ねえ」 だから、聞いてみたのだ。 「他に遊ぶ友達とかいないの?」 まあ私が言えたことではないのだけど、 活発なこの少女が本を読んでばかりいる私の所で一緒に本を読んでいるから、 だから、ふと気になった。 「うーん、いないと言えばいないし、いるといえばいるのかな」 「どっちなのよ」 「私にはね、ずっと目を覚まさない妹がいるのよ」 初耳、だった。 それ以前に私はスカーレットの娘は二人いるなんて知らなかったから。 「目を覚まさない……て?」 「文字通りよ、産まれてから目を覚まさないんだって。お父様が言ってたわ」 そうだったのか、 驚いた、この少女は、私よりも大変な目に遭っている。 私の喘息なんかよりも、大変な。 「だから、数十年は暇で暇で」 「え?」 今、レミリアはなんて言った? 数十年、今確かにそう聞こえた。 「レ、レミリア、貴女何歳?」 「うーん、三百は越えてると思うわ」 その発言に私は更に驚いた。 私たち魔女は百年以上生きると言うが、 この少女は既に三百年生きているのだ。 ……吸血鬼は不老なのかしら? いや、だったらスカーレットが白髪混じりの髪の毛をしているわけがない。 というか、伯爵は何年生きてるのよ。 「吸血鬼は半永久的に生きるのよ」 半……永久。 背丈も、体つきも同じくらいのこの少女は私よりも何百年もの経験をしている。 「ま、心臓に杭を打てば死んじゃうと思うけどね」 と、レミリアは冗談混じりにそう言った。 そう吸血鬼、いわばバンパイアはニンニクが苦手な事や十字架が苦手なんて事はない。 現に、伯爵の食事にはニンニクが使われていたりするし、 カッコつけて十字架のアクセサリをしてると他の魔女から聞いた。 まぁ、でも唯一光が苦手みたいだけど。それ以外に特に吸血鬼には弱点は無い。 最強の種族、それが吸血鬼。 「ねえ、パチュリー」 レミリアが顔を覗き込む。 「この館を探検してみない?」 「……へ?」 第一声は私の反射的に出た驚きの声。 ただでさえ、この館の事は全部知らないし、ましてやこの館がどれだけ広いのか知らないのだ。 「さ、いこ」 私の右手を握り、にぃと笑いながらレミリアは私を引っ張った。 「ぁ」 持っていた本が、手からすり抜け、落ちた。 そんなことをお構い無しに引っ張り、それに合わせて私は足を踏み出した。 振り向いたら、本が、ソファで眠っていた。 まるで、誰かがその眠りを冷ましてくれるのを待ってるかのように。 振り向き、本に一瞥し、 レミリアに顔を向ける。 「ねえ、何処に連れていってくれるのかしら?」 レミリアは笑いながら言った。 「何処にいこうかしら……。そういや、貴女は本が好きなのよね?」 「え?……まあそうだけど」 「ふふ、なら面白い所に連れてってあげる」 「わぁっ!? ちょっと待って……」 走り出すレミリアを制止する。 私が喘息持ちだと言うことを告げたら納得したのか、仕方ないわねと言って歩を緩めた。 「……ありがと」 私は息切れしながらもかとうじて言った。 恥ずかしいのかレミリアはそんなのをお構い無しに深紅の絨毯が敷かれた廊下を歩く。 通りかかる魔法使いや魔女、色んな人達が、声をかけた。 「お嬢様と……」 「パチュリーよ、私の友達」 「ははっ、二人とも可愛らしいですな。これから散歩ですかな?」 「まあそんなところよ」 「お気をつけて、お嬢様、そしてお友達のパチュリーさん」 執事、というのだろうか、 館の仕事(主に家事だが)をしてる男の人が丁寧な言葉で話しかけてきた。 談笑し、さ、いくわよと言われ、また歩き出す。 物心ついたときには、本が好きで、一日中読んでた事もあった。 そんな訳で、久しぶりの部屋の外に、しかも話しかけられるなんて予想外の出来事で、 適当に返せばよかったのに。とレミリアは言った。 「でも、皆優しいのね」 私はレミリアに言った。そう、皆笑顔なのだ。 レミリアはクスッと笑った。 「この館で、一番やさしいやつがいるわよ」 私はきょとんとし、誰?と訊いた。 「やさしい、じゃないわね。……お人好しって言うのかしら」 その答を聞く前に、レミリアはすっと立ち止まった。 「ここよ」 目の前には大きな扉。 扉には装飾が施されており、普通の部屋じゃないというのが一目で分かる。 「この先は……?」 「いいからいいから」 そう言うと、レミリアは私の手をぐいっと引っ張り、扉に手を付ける。 ちらりと横を見ると微笑んでるレミリアがいた。 ──片手では扉が開かないので、両手で扉を押す。 ぎいい、という木製特有の軋む音が聞こえ、目の前の光景に目を見張る。 「───」 そこは図書館だった。 至るところに本、本という書物がところせましにあった。 この館にこんな部屋があるとは思いもよらなかった。 魔法使いや魔女は本を読み、なにか魔術の勉強してるのだろうか、時折魔術の詠唱のようなものが聞こえる。 「どう?この紅魔館で一番本がある部屋よ」 「凄いわ……、ここの本は私も読んでいいのかしら?」 「大人の迷惑にならなきゃいいってさ。……あ、あと大声は出さないようにだって」 その声を聞くと、すぐ近くの本棚に歩み寄る。 それに付いていくレミリア。 凄い、楽しい、幸せだ─── そして私は本を手にとった。 ふふ、分厚い本だから読むのも時間がかかるだろう。 退屈そうなレミリアには悪いわね。 そんな事を考えると、自然に笑みが溢れてきた。 夢みたいで。 ──それから数日が経った。 「あー、パチュリーに図書館の事教えなければ良かったわ」 「あら私が図書館に居ればレミリアは私を探す手間が省けるじゃない」 「まあそりゃそうなんだけどさ……」 図書館のテーブルの向かいにはレミリアが座っていた。 肘をついていかにもつまんなさそうにこちらを見る。 そんな私は視線を感じながらも本を読んでいた。 「レミリアも何か読んでみたら?」 「……絵本なら」 「…………」 「そ、そんな目で見ないでよ!」 「たまには嫌悪せず読んでみたら?」 「気が向いたら、ね」 そう言ってレミリアはテーブルに突っ伏して寝てしまった。 それもそうだ、これは最近気付いたことなのだが、どうもこの図書館は本を痛めない為に本に対して丁度いい温度調節がなされているらしい。 しかもその温度調節も魔法でやってるらしい。 私は別に魔法を使って何かしたいわけでもない。 ただ、知識を得たいという欲求。それが、私を突き動かした。 誰かが言った。 不完全なモノが完全なモノを欲する欲求。 イデアの世界に憧れる人間。 私はそんな哲学で自身という存在を定めたくない。 今、こうして本を読み、 レミリアという友達がいる。 それで十分。 「……どうしたの?」 「ふふ、私は幸せね」 「何よいきなり、パチュリーらしくないわ」 「そうかしら」 「そうよ」 少なくとも、私は幸せだ。

≫行間

「久しぶりね、伯爵」 「はっはっは、久しぶりだな」 窓からは満月の光が射し込み、既に空は漆黒の闇に支配されていた。 「で、今日は何の用かな?」 伯爵が後ろを振り向き、声の主──。 傘をさし紫色の西洋風のドレスを着た女性がクスッと笑った。 「たまに顔を見たくなっただけよ」 「そうかそうか、ゆっくりしてってくれ」 「お言葉に甘えて」 二人はテーブルに向かいながら、椅子に座り、談笑にふけた。 「そうだ、ワインなんてどうだろうか?」 「ふふ、頂戴するわ」 白髪混じりの髪をかきあげ、両手を叩き、召し使いを呼ぶ。 「すまない、ワインを持ってきてくれるかね」 「はい、少々お待ち下さい」 その光景を見ていた金髪の女性は笑いながら言った。 「貴方は召し使いにも敬意を払うのね」 「ははっ、亡き妻にも言われたな」 「あらごめんなさい──」 「いいんだ、覚悟してたことだしな」 一瞬、沈黙がその場を支配した。 部屋にノックの音が響き渡った時には、伯爵は、意気揚々と召し使いの元に向かった。 「貴方も大変ね」 女性はそんな伯爵の後ろ姿を見て呟いた。 「あら良い香り」 「何年も、何十年も寝かしたやつだからな」 ワインを注ぎ終わり、グラスを持ち、 「久しぶりの友に乾杯だ」 「乾杯」 ガラスとガラスを合わせた時に鳴る、特有の音が鳴り響き、 少量のワインを口につけると、伯爵は笑った。 「それにしても、変わってないな」 「それはどう意味で、かしら?」 「勿論、誉め言葉だ」 そして、また伯爵は左手でグラスを持ち、ワインを口につけた。 「ねえ」 「ん、どうしたんだ?」 女性は先程の顔と一変、 真剣な面持ちでこちらを見ていた。 まさか、という驚きと嘘だ、という否定が入り交じり、それが声になった。 「ねえ貴方、まさか右手が動かないの……?」 伯爵は、また、笑った。 「流石、東の大妖怪様だ」 動かない右手と左手で器用に拍手をした。 ぺちぺちと乾いた音のそれは、拍手の音では無かった。 「そうだ、私はこうやって拍手する事も出来ない。  ……ましてや魔法使いや魔女が私を喜ばそうとして芸をやっても、私はそれに応えることも、出来ない」 でも、と女性は思った。 そもそも吸血鬼というものは、寿命で死ぬことなんて無い筈だ。 伯爵の右手は、動かなくなったのか、それとも、動かなくなってしまったのか。 「それって───」 「寿命が近いのかもしれないな」 女性が言うのを遮るように、伯爵は静かに、言った。 「……でも貴方は吸血鬼よ? 寿命はまだまだある筈よ」 「そうかもしれないな」 そう言うと伯爵はワインが入ったグラスを持ち、近くの月が見える窓際に立ち、星空を眺めた。 「今日貴女が来たのは"運命"かもしれないな」 「運命……ねぇ」 女性がワインを一口飲むとそう呟いた。 いつもより声のトーンを落としたその台詞は何か落胆したような物言いだった。 「私の命はもう間もなく潰えるだろう」 「…………」 伯爵は未だ、夜空を仰ぎ見ていた。 そして、続けた。 「私が死ぬと分かれば、教会はこの館に火を放つだろう。 ……でもそれだけは避けたい。そこでだ」 「まさか、」 伯爵は少し躊躇った後、重い口を開いた。 その"頼み"に女性は微かに、頷くと伯爵はワインを飲み干した。 「さて、今日は半月のようだ。そういえばそっちはどうなんだ?」 「…………?」 声のトーンが戻り、まるでさっきと別人のように、懐かしんだような声で伯爵は訊いた。 その問いに一瞬首を傾げる女性、すかさず伯爵は 「本で読んだんだが、あんたは人間が好きなのか?」 「……そんなの出鱈目よ」 「ははは、ジョークだジョーク。そりゃそうだ、貴女は人間を貪るようなレディでもないしな」 「真顔で言うから冗談なんて分からないわ」 「くくくっ、冗談だからこそあらゆる方法で笑わせてみたいのだよ」 「あら笑わせる事でも勉強したのかしら?」 「全然」 伯爵が肩をすくめ、両手を挙げた。 「貴方と会うのは今日で最後かもしれないからな、……今夜は楽しもう。永い夜に、なりそうだ」

≫第二章

「パチュリーおはよー」 「おはよー……って、もう深夜よ?」 「吸血鬼は夜が朝なのよ」 あれから私は図書館の本を読み、ほとんどの本を読んでしまった。 俗に言う"閲覧可能"な本を。 それでも本を読むことによって、私はある程度の魔法を修得していった。 例えば火を起こしたり、風を吹かせたり。神の力と言われた四大元素を操る程度には至った。 やはり、四大元素は神の力なんてものじゃなかったけど それでも、やはり人の目には神秘に写るし、科学では証明出来ないような力。 ましてや神の力と謳ってる教会は魔女という存在はやはり驚異であり忌むべき存在なのだと感じた。 「教会?この館は大丈夫よ」 前に不安に思い、レミリアに訊いたら、そう返された。 確かに、魔女や魔法使いがたくさんいるのに教会の手がかからないと言うことは、 教会がこの館の存在に気付いてないか、或いは強大過ぎて手に負えない、という事だろう。 そうパチュリーは考える。 「ねぇパチュリー」 「ん」 「パチュリーってなんか呼びづらい」 「そんな事言われても」 「パチェなんてどうかしら?」 「…………」 「うっ、どうせ私にはネーミングセンスなんてないもん」 「仕方ないわね、貴女だけよ」 「……貴女だけ?」 「親友である貴女だけ、パチェと呼ぶことを許してあげる」 「やったー、じゃあ私のあだ名も考えて!」 「そうね…………」 全く、……気に入ったなんて言えないじゃない。 「レミィ、なんてどうかしら?」 「パチェってまさかネーミングセンス無い……?」 「…………」 そこまでストレートに言われるとショックを隠しきれない。 まあ、レミィってのはパッと思い付いた名前だし仕方ないわ と、正当化して、ショックを和らげる。 「でもレミィってのもいいかもしれないわね」 あれから少し経ち、本を読み始めた頃合いに不意にレミリアがそう言った。 遅いわよ、と内心突っ込みたかった。 「パチェ」 「ん」 「ふふ、呼んでみただけ」
「魔女……狩り……?」 「ああ、教会はどうやら私達を狙っているらしい。肥大化した魔術軍団として恐れられていたみたいだが、それでも私達を消そうと躍起になっている」 レミリアが怖くないように伯爵は手を握った。 温かくて大きなその手は力強く、優しい、手だった。 「私達……、殺されちゃうの?」 「いや違うよレミリア、私達は死なない。この館には地下室があるだろう? そこで暮らせば大丈夫だ」 レミリアはもう頷く事しか出来なかった。 最近、館の外には怪しげな人間が徘徊するようになった。 人間の服装からして教会の者だ、と見抜き伯爵や賢者達での会議が始まった。 結論としては、伯爵が言った武力解決ではなく犠牲の少ない和平的解決の案が採択された。 その案は館の住人を地下の大きな空間に一時期まで住むという事だ。 「火?そんなもので私達はしなないさ」 教会は館に火をつけるだろう。 だが火をつける事で地下への経路を消し、存在を隠せるという案に賢者達は顔をしかめた。 何故なら、この館は、この場所は 紛れもない"故郷"だったからだ。 「館よりも、皆が生きてくれた方が私は嬉しい」 その一言は重く、賢者達は伯爵の案に賛同した。 あくまでも犠牲の無い手段で、今も会議が毎日開かれている。 「ずっと地下に住まなきゃならないの……?」 「いやずっとではない、来るべき時までの辛抱だ」 来るべき日、 そう伯爵は館の皆に言った。 それが何の日なのか、何時やってくるのかは言わずに。 皆がかつてない館の危機に対して不安を抱くなか、伯爵だけはいつもの伯爵だった。 「パチュリーと言ったかな?レミリアと仲良くしてやってくれ」 「……あ、はい」 娘を案ずる父の顔はとても穏やかで、 もしかしたら、このまま何も起こらないんじゃないかなとか、 そう、思ってた──

≫第三章


『ごめんなさいね、伯爵』
あれから数週間後の満月の日のこと。 「ねえ、そういえば貴女に妹がいるのよね?」 今考えれば時期を考えるべきだった。 でも私は好奇心からか、レミリアに聞いてしまった。 「そういえばパチェは会ったことないんだっけか」 そうかそうか、と妙に納得しながらレミリアは口元を釣り上げ、口元に手をあてにぃと笑いながら、 「んじゃ今から会いにいきましょ」 窓から溢れる満月の光はとても、優しかった。 「そういえば貴女の妹さんはどこにいるの?この館ならほとんどの部屋に行ったことあるのだけど」 何十年も館に居り、この館のほとんどの部屋にはもう出入りしたことがある。 それにレミリアの妹に会ったなんて話も聞いたことない。 ましてや、存在していないとさえ言ってる者もいるくらいだ。 「まあまあ、何も言わずに私についてきなさい」 レミリアはそう言いながら朱色の絨毯をすたすたと歩き、 「まあでも、眠ってると思うしホントに会うだけかもね」 「……え?」 驚く私を見て、彼女は不安にさせないように笑った。 「何百年も眠りから覚めないの」 笑えない。 「……驚いた、貴女の妹は地下にいたのね」 そうよ、とレミリアは言って地下への階段に足を伸ばした。 地下に生活物資を置くために大衆に開放されてるせいか、階段を降りる私達を誰も咎めはしなかった。 ……それもそうだ、この幼いようなこの少女はこの館の主の娘なのだから。 そして会いに行くは、彼女の妹。 階段を降りるとそこは大きな廊下が広がっていた。 赤い絨毯が広がり、ほのかに私達を照らすシャンデリアがあった。 私はてっきり石畳のような冷えたものばかりと思っていた。 「このシャンデリア、火の魔法かしら?」 「んー、私はいまいち分からないけど多分そうよ」 眩しくなく、暗くなく、揺らぎの無いシャンデリアについているキャンドルの火。 ……この館の賢者達の魔法の力は計り知れない。 「でもパチェもこれぐらい出来るんじゃない?」 「まあね」 「まあね、って大層な自信だねぇ」 「貴女が寝てる間に私は実験を何度も繰り返したんだから」 「だって図書館は退屈なんだもの」 すたすた、と歩く二人。 やがて一番奥、金のドアノブがついたドアに辿り着く。 「ま、私は何度も見てるから今さら、って感じなんだけどね」 そう言って、吸血鬼は微かに笑い、ドアノブに手をかけた。 「───」 レミリアがドアを開けると、そこには白いベッドと少女が一人。 私はおもむろにその白いベッドに眠っている少女に近づいた。 綺麗な金色の髪、白く透き通った肌に、幼いながら整った顔立ち。 まるで西洋人形かと思わせるそれは、小さく息をしており、まさしく"眠って"いるのだった。 「綺麗」 「でも綺麗だけじゃないのよ」 レミリアがすっと、が彼女の腕の近くにあるものを指差す。 「……っ」 指の先には、レミリアと同じ彼女の翼があったのだろう、が、しかしそれは翼と言えるようなものじゃなかった。 彼女の翼は朽ち、植物の茎のようにだらりとして吸血鬼としての象徴は既に消失していた。 「もしかしたら、彼女は目を覚まさずに──」 レミリアが口を止める。ハッとし俯く。 私はそんなレミリアを初めて見た、誰にもそれを見せたことがないのだろうか、いやそうに違いない。 「吸血鬼は寿命が長いのよね?」 「……うん」 「なら寿命によるものではないのね」 ふと、彼女の身体にそっと触れる。 ……冷たくも、温かくも無かった。 そして、 「魔力が感じられない……」 「どういうこと?」 「彼女には生きるために必要な魔力が枯渇してるのよ、……ねえレミィ彼女を他の魔法使いに触れさせたことはある?」 「……ないわ、お父様はフランを大切にしてたもの」 ならば、魔力が枯渇してるという事実を知らず、野放しにしてきたのだろうか。 魔力は無くなれば吸血鬼といえど直に身体も腐敗していくだろう。 ということは、魔力さえ十分に戻れば彼女は目覚めるのかしら? それにはどうすればいい、どんな手段で、どのくらいの魔力を必要とするのか……。 ふと、気づいた事がある。 魔法使いは魔力を高めるために魔法陣のような媒体を使うことがある、それを応用すれば──。 「レミィ、もしかしたら──」 ──目を覚ませる事が出来るかもしれない。 「それは……、本当?」 「……多分ね」 レミリアが私の袖を掴んで、言った。 「お願い」 弱った、あくまでも推測であってそれが正しく、目を覚まさせる保証なんて無いのだ。 ……でも、 「分かったわ」 彼女の期待は裏切れない。 いや違う、きっと応えたいんだと思う。 そう考えたら、不可能なんて無いと思えてきた。 それからは、時間さえ流れてるのか分からないくらい本を読み耽った。 それくらい片っ端から手がかりになるものはないかと必死だった。 レミリアに関しては、あれから魔女や魔法使いと手伝って館の家具や生活品を地下に持っていった。 館は随分と片付き、以前のような輝きは消え、がらんとした光景が広がっていた。 それに続き、この図書館も段々と本が片付けられてきた。 「これも違うわね……」 魔法といったって様々だ。 大きな絨毯から一本の違う色の糸を見つけるようなものだ。 そんな本を読み続ける生活も数週間が経った。 「……これって」 捲っていた手を止め、もう一度表紙を見る。 間違いない。これはちゃんとした魔法の本。ファンタジー等ではない、ましてや紛い物でもなさそうだ。 それを確認し、再びパチュリーはページを捲った。 七つの系統、 七つの属性、 七つの曜日、 魔法の根底にある、理が、そこには在った。 かつての錬金術士や魔法使いが夢見た、幻想の秘。 ───賢者の石に関する本を私は見つけた。 しかし、何故この本の存在に誰も気付かなかったのだろうか。 一通り読み終わり、息を全部吐き出すようにため息をした。あとは解らないところを読み解くだけだ。 珍しい、貴重な本というのは表紙等は目立つような派手な装飾ではなく、簡素な作りである事が多い。 タイトルも賢者の石じゃなくて「石」と表記されてるあたり、誰もこの本を読んでいないのだろうと思う。 ふと周りを見たら誰もいなかった。 ぼんやりと窓の外からは月の光が漂っていた。 パチュリーはそれを目を細めて見つめ微かに深呼吸した後、 大きな分厚い本を手に取り、暗く、静かな図書館を後にした。 図書館から出ると、真っ暗な闇が現れた。 この時間ならレミリアや伯爵が普段起きる頃合いだから自然と召使い等がこの廊下を通ったりしている。 それなのに、物音一つしない。 考えても仕方ないという結論に至り、きっと地下にいけば皆いるだろうと思い足を踏み出す、 その時だった。 どっか、遠くで何かが音を立てた。 金属の音のようなそれは、館の門を開けるときに聴こえる── 「……嘘」 今、考えた結論を確かめるべく、咄嗟に図書館に入り月光射す窓に近寄る。 もしもの場合に備え、机に置いてある賢者の石の本を手に抱え、窓を覗いた。 「────」 唖然だった。 "来る筈の無いその時"がやってきた。 門の前に数十の鎧を纏った人間、騎士と呼ばれる武装集団が松明を片手に携えていた。 さっきの音はやはり門が開いた音のようだ、体格の良い人間が一人、門を開けて館の様子を調べていた。 その出来事、事実に、胸の鼓動が高鳴り、肩が震えてきた。 「あれはなに?教会・・・? 怖い、怖いわ……。早く皆の元に帰らないと……」
「全く、パチェは何処にいるのかしら?」 教会の騎士達が現れたと情報が入り、館の住人は地下の居間に集まり、息を潜めていた。 住人達は驚きながらも緊張した面持ちは無い。 伯爵が「一夜で終わるだろう」と言ったからだ。……それでも館の賢者達は、あらゆる危機に備え、会議を始めていた。 私は大きな居間を出て、薄暗くなった地下の廊下に出る。魔力を最小限に抑えたシャンデリアのキャンドルの火は風に靡かれ今にも消えそうだった。 地下にはまだいくつかの部屋がある。 本を蔵書した部屋や食料を確保するための部屋、あとは妹の為の部屋と父上の部屋。 他にも住人が生活できるような部屋が数多にある。地下で暮らせと言われても可能な作りなのであった。 背伸びをし、ひんやりとした地下特有の空気を感じながら、軽い足取りで父上の部屋に向かう。 足音が響き、無意識に足音のしないような歩き方になる。それもその筈で、現実味は無いが教会の魔の手がすぐそこまで来ているのだ。 地上から聞こえなくても、無意識にそうしてしまう。 扉をノックし、金でコーティングされたドアノブに手をかける。 「お父様───」 返事がしない。 「──お父様?」 もう一度、この部屋の主を呼ぶ。 が、その呼び掛けに答える者はいなかった。 レミリアの視界には僅かに温もりがある天蓋付きのベッドとワインのグラスだけが残されていた。 これを意味するものは……? レミリアは顎に手を添えて考えた。 大きな居間にもいなかった、ならば他の部屋にいるのだろうか。 父上が行きそうな場所といえば……。 ──妹の部屋、か レミリアは納得し、なんだ心配させないでよと思いながら背伸びをして、父の部屋の扉を閉めて妹の部屋に向かった。 ……レミリアは気付いていなかった。 グラスにはかつてワインが注がれていたことに。 そして、その近くに手紙が置かれていたことに。 こんな事態に部屋にいないから不安に思っちゃったじゃない。 こんな時に妹の部屋にいくなんてやめてほしいわ。 会ったらはっきり言ってあげなきゃね。 地下の数多の部屋の奥に存在する妹の部屋。 出入りがほとんど無い、この場所にはやはりキャンドルの火は灯っておらず、暗闇だけが支配していた。 レミリアは目を細め、闇に慣れた目で妹の部屋のドアノブを確認し、握った。 ──その時だった。 「貴女に与えられた役割は一体何なのかしらね」 「!? 誰──?」 咄嗟、後ろを振り返り、紅い槍を作り出す。それまでにかかった時間は既に秒数ではなくコンマの世界。 だがしかし、その声の主はどこにも見当たらなかった。 ……艶のある女性の声だった。 レミリアは見渡した、どこにも人の影は無い。ならば幻聴かしら?と首をひねる。 だけど、その幻聴が頭の中で何度も復唱された。 ……全く、私もなめられたものだ。これでも高貴な吸血鬼だ。そこらへんの亜人とは全然違う。 レミリアはどこか憤りを感じながら、ドアに振り返り、ドアノブを握った。 父の部屋と同じドアの装飾であしらわれた妹の部屋。 「…………」 そこにも父の姿は無かった。 いや冗談はよしてくれ、ましてやあの父だ。ジョークと言って私を驚かすに違いない。 ほら、きっと、私の後ろで驚かそうとしてるんだわ。 「いない……、よね」 天盖付きのベッドに、妹だけが平気な顔をして目蓋を閉じていた。 それをぼーっと見つめながら、頭の中を整理する。 私は居間に父の姿が無いからここにやってきたのだ。父の部屋にもいなかったし、廊下では誰ともすれ違わなかった。 「……違う」 もし、あの声が本物ならば? まず私にあの口調で話すような"輩"はこの館にはいない。だったら── 声の主は侵入者であり、この地下にはいてはならない存在。 いや地下があるという事がバレたという事か? それならば非常にまずい、教会の奴等に告げ口、或いは館の住人を殺しにかかるだろう。 だったら、父はどこ? 何を、しているの──? 一人、自分に対して悪態を付き、妹の部屋から身を翻し皆がいる部屋へと走った。 廊下には誰もおらず、キャンドルだけが自己主張するように火をゆらゆら灯していた。 居間に入ると、一同が私を見た。 「……ここに全員いるかしら?」 静まりかえった部屋にレミリアの声が響き渡る。 低く威厳のある声に、住人達は互いに顔を見合せ全員いるかどうか確認する。 「魔女が一人いません……」 返ってきたのは予想外の答えだった。 その、魔女というワードに心臓が高鳴っていく。 レミリアは辺りを注意深く見渡し、誰がいないのか見極める。 そして、もしかしてという不安が、紛れもない確信へと変わった。 パチェがいない─── 刹那、レミリアは居間から飛び出した。 一陣の風が、吹いた。 「お待ちください、お嬢様!」 地上への扉に手をかける瞬間、後ろから声がした。 「……なに?」 振り返らず、その声の主に耳を傾ける。 その声は年老いた賢者だった。普段は大声など出さないのだろう、叫んだその声は多少裏返っていた。 「夜は危険です」 「私はね、」 賢者を制すように、"扉に向かって"言い放った。 「友を見殺しに出来るような冷静な奴じゃないの」 「ですが────」 「他言に無用よ、貴方達はここにいなさい」 そして、レミリアは扉を開いた。 向かうべき場所は、ただ一つ。 「待っててね、パチェ」

≫第四章


全く、貴方は優しすぎるのよ 馬鹿みたい。 「……そろそろ、かしら」
「何を躊躇っている?」 伯爵がため息混じりに呟いた。 門が開けはなたれた音を聴いて既に数分が経っていた。 ああ、突撃の準備をしているのか。そう考え、ふと乾いた笑みを溢す。 緊張が感じられないな、 まあそんなものなのだろう 全く、私はどうかしているのかもしれない。 でも、それが"私"なんだろうな。 館の入り口、玄関ともいえるエントランスで伯爵はまた笑った。 自嘲気味に笑ったそれは、他人からみたら寂しい顔をしていた。 ──足音が扉越しに聞こえた。 さあ、来なさい 早く、その扉を、開けておくれ。 ──そして、扉が開け放たれた。
教会の騎士達が乱暴に扉を開け放った、その向こうには一人の男性がいた。 白髪混じりの髪の毛に、使い古されたような黒のロングコート。 正装した、この館の主が騎士達の目の前に、いた。 「こんばんは、こんな館に何かご用でも?」 騎士達は驚愕した。 あの伯爵は怒気を込めて追い返すか、もしくは力で解決するんじゃないかと思ったからだ。 だがその反対に、この館の主は丁寧にお辞儀をし寂しそうな声で客をもてなした。 「神の名の下に、貴方を、ツェペシュの末裔を処刑させてもらう」 騎士達の中から一人、体格のいい男が出てきて、サーベルの剣先を伯爵に向けながら言い放った。 その剣先は、微かに震えていた。 それを見、伯爵は 「一つだけ、あんたたちに頼みたいことがある。」 「事によるが、聞いてやろう」 予期せぬ事に、後ろの騎士達が微かにざわめく。 「永年、この大きい館で"独り"で暮らしていたんだ。  最期もこの館とともに死にたい。……君達に手は出さない、その代わり、この館を荒らさないでくれ。……頼む」 最後に伯爵はまた深くお辞儀をした。 敬意なんてものは、既に騎士達には無かった。けれど、異形の者であれ、その態度に目を見張るものがあった。 「ふむ、これ以上犠牲が無いのは良いことだ。その頼み、考えてやろう。悪魔よ」 そして、一人の騎士がサーベルで心臓を貫いた。 伯爵は抵抗、しなかった。
「……やっぱりここにいたのね」 「レミィ──。怖かった…怖かった……」 館の図書館、いや元図書館にパチュリーはいた。 震えるパチュリーをぎゅっと抱きしめる。 「教会の騎士達が外にいるみたいなの……」 「そう……」 ついに来てしまったか。 レミリアはパチュリーを撫でる。 緊張をほぐすために。 「貴女が地下にいないから驚いたわ」 「……ごめん」 「でも安心した。捕まったんじゃないかって思って駆け出したのよ」 「レミィが?」 「ええ」 何の変哲も無い会話。 それでも、何故か可笑しくて、笑顔になってしまうのは何でだろうか。 「そうだ、ねえレミィ」 「ん」 「見つけたわ」 「何が?」 目を輝かせるパチュリー。 よく見るとパチュリーの手には一冊の本があった。 「……まさか」 「そのまさかよ、ううんそれは可能性でしかないんだけど。けど、見つけたわ、貴女の妹を目覚めさせる方法を」 二人は、やったと言わんばかりに微笑んだ。 「さっ、地下に帰りましょ。皆が待ってる」 レミリアが言ったその瞬間、大きな音が響き渡った。 きっと入り口が乱暴に開かれたからだろうと予想し、パチュリーの手を握る。 「あいつらに見つかったらおしまいね」 「分かってるわ」 意を決し、元図書館の扉を慎重に開ける。 変な物音は立ててはいけない。それでも足早にいかなくてはならない。 二人に緊張が走る。 二人で仲良く歩いたこの赤い廊下が、いまでは暗く冷えきった無機質な廊下だった。 今じゃシャンデリアに火は灯っておらず、少し色褪せた壁が、ここに私達二人しかいないことを際立たせていた。 しばらく歩くとエントランスの近くを通る廊下に出た。 緊張のせいか二人は無言だった。 ここを過ぎれば地下への道だ。 ふと、レミリアが足を止まる。 突然の出来事にパチュリーが戸惑う。 「話し声が聞こえる──」 小さく、そう言うと、レミリアはエントランスに繋がる廊下に少しだけ、顔を出した。 少しすると、レミリアは 「パチェ、先に行ってて──」 「レミィは?」 「少しここにいるわ」 「危険だわ」 「大丈夫、すぐ帰ってくる」 「……絶対ね」 「分かってるわ」 そう言うとパチュリーは地下へ向かって行った。 「それにしても、」 レミリアは見てしまったのだ。 父と騎士達が話し合ってるのを。 「お父様は何をする気……?」 レミリアはもう一度、エントランスを覗きこんだ。 レミリアは隠れながら耳を傾けた。 「一つだけ、あんたたちに頼みたいことがある。」 父の声が、聞こえた。 探しても無駄だった父は地上にいたのだ。 いや、それにしても何故ここにいるんだろうか。 頼みたいことって、何? 騎士がサーベルを向けながら、頷いたのが見えた。 父なら、あのサーベル等一瞬で粉々に出来る筈なのに。 何で……? 手に力が入り、壁に爪が食い込む。 人間等の言いなりになるの――? 父が、重い口を開いた。 「永年、この大きい館で"独り"で暮らしていたんだ。  最期もこの館とともに死にたい。……君達に手は出さない、その代わり、この館を荒らさないでくれ。……頼む」 独り? だから、荒さないでくれ……? 「…………ッ」 父の意図が読めた時には、 「残念だったな悪魔、その頼みはやはり応じられんな」 最悪の形で、結末を迎えた。 ───何かが音を立てて崩れた。 頭はもう、真っ白だった。 「うわああああああぁ!!」 そんな事よりも、 『はっはっは、友達が出来たのかそれは良かった』 私は、 『その友達を大切にするんだぞ』 私は────!!! ──二階からシャンデリアに飛び乗り、落下と共に、叫んだ。 「──我は、ツェペシュの末裔、レミリア・スカーレット  ……貴方達を串刺しにしてあげる」 「やはりな、思った通りだ。悪魔の言うことなんて聞くもんじゃない。  ツェペシュの幼き末裔。そして悪魔の少女よ、この館は既に包囲されている。我等を全滅したところで───」 「五月蝿い」 頭が物事を深く考えられなくなる。 右手には紅い槍。私の魔力が具現化したエネルギーの結晶。 レミリアは10メートル以上の間合いを一瞬でつめる。 「ひっ───」 剣を降り下ろす動作がスローモーションに見える。 ──遅い。 「お父様の仇!!」 零距離の槍を心臓めがげて貫く。 魔力で精製された槍は甲冑を破り、何人もの騎士を貫いた。 叫ぶ間もなく、絶命する。 「──突撃ぃ!!悪魔を殲滅するのだ!!!」 その掛け声に包囲していた騎士達が窓ガラスを破り侵入してきた。 レミリアは近距離では槍よりも己の爪の方が動きやすいと感じて正面玄関からやってくる騎士達を襲いかかった。 幾重の鎧を纏いても、鎧をも砕く吸血鬼の力にはただの紙でしか無かった。 幸いな事か、銀が使われている鎧は無かった。 「仇……仇……」 人間なぞに、殲滅などさせはしない……! ましてやここは父が愛した家だ……! ……絶対に、許さないのだから。
パチュリーが地下に入った後、地上で爆音が轟いた。 きっと騎士達が突入したのだろう。 暗く、冷えきった廊下を歩きながら、考える。 あの時、あの場所で、レミリアを踏み止めた何かがあった筈。 騎士がいたくらいで、あんな場所にいないだろう。 ……考えても仕方ないか。 じきにレミリアは戻ってくる筈だ。 今は、レミィの妹を目覚めさせなければ。 なにも、こんな事態で、と思うが。 こんな事態だから、やる。と自分を正当化し、深呼吸する。 『少なくとも、貴女は何のためにやるのかしら』 後ろから声がした。 艶やかな大人の女性のような声。 少なくともこの館の住人ではないだろう。 「誰」 振り返らずに、そう呟く。 振り返るという隙を与えてしまってはいけない。 そう感じたパチュリーは小声で詠唱しルーンを刻み、相手の出方を待つ。 『でも、貴女の判断は間違っちゃいない』 その声がした途端、パチュリーは咄嗟に振り返り風の魔法を繰り出す。 「……」 そこには誰もおらず、 絨毯だけが風の魔法によって無惨に切り刻まれていた。 今のは一体……? 声がした所を見つめていたが何も変化は無かった。 幻聴だろうか?いやそれは無い。はっきりと聞こえたから。 ならば侵入者?教会か?いやそれ以外? だがしかし、私が無防備な状態なのに何も無いということはそういうことなのだろう。 「それでいい……、か」 振り返り、火が消えて暗くなった廊下を進んでいく。 レミィは地下に戻ったかしら? 騎士達は伯爵の言うように館を燃やして帰ったかしら? まあそんな早く終わるわけないのだけれど、 でも 今日、が終われば。 この夜が終われば、 またいつもの日常に戻るのだろう。 そして私は、レミィの妹の部屋に入った。 妹を、目覚めさせる為に。
「…………」 夜風が気持ちいい。 レミリアは騎士達の死体の山を見てため息をつく。 "エントランス"にやってきた者達は全て殺した。 倒れてる父を、守るように。 それがこの有り様だ。 薄紅色のドレスは返り血に染まり、口の中は鉄の味で吐き気がした。 しかし、怪我一つしないだけ良かったといえよう。何十もの精錬された騎士達と傷一つなく消したのだ。 血塗れの手をドレスで拭い、倒れてる父を抱き上げる。 「……レ……ミ……リア?」 微かな声で父は言葉を紡ぐ。 まだ生きてる!レミリアは安堵して伯爵に駆け寄る。 「お父様、大丈夫?」 「……なあに……、ひと……突きじゃ……やられない……よ……、レミリアは……大丈夫…か?……すまない……、私の……父さんの……せい、だ」 肩が震えていた、レミリアは涙をこらえて父のそれを否定する。 「父上のせいじゃないわ、……父上は、悪くない」 「……レミリア」 「なあに?」 「私はもう……、長く、ない。最後に、……みんなの顔が……見て、みたい」 「……うん、分かった」 レミリアは深く、頷いた。 ……最後、というワードがレミリアの胸に突き刺さった。 「……すまないな」 レミリアは父の肩を支え、歩いた。 私は父の顔を見ずにただ前だけを見ていた。 「…………」 だって、騎士達はまだいるのだから。 父を守らなきゃ、いけない。 気配を感じるに、数人どころではなかった。 何十もの騎士がこの館にいるだろう。 私達は誰にも見つからずに、地下に入らなければいけない。 騎士に見つかって地下がバレてはいけないのだ、応援を呼ばれてしまってはいけないのだ。 「……ごめんな」 何度目の言葉、だろうか。 けれど私は、仕方無いわと言って慰めるのだった。 そんな言葉、父には相応しくないのに── それに、父を騙したのはあの人間達だ。 父は悪い事などしていない。 それに 「……地下に逃げさせたのはそういうことだったのね」 あの交換条件を聞いてしまった。 父は優しいのだ。それにお人好しなのだ。 だから、血を流さない父なりの最善の手を選んだ。 けれどそれは人間の裏切りになって潰えた。 「……ああ、けど、それも駄目、だった」 小さな声でそう呟いた父はどこか寂し気だった。 地下への隠し扉は見つかった形跡は無かった。 赤絨毯を捲らないとその扉は無いからだ。 ……ともあれここまで来て見つからなかったのは奇跡といえよう。 私は隠し扉に手をかけて厚い扉を持ち上げた。 一層、冷たい風が頬を掠める。 無言でレミリアと伯爵は扉の向こうの階段へと足をかけた。 伯爵はというと、刺されたのにも関わらず多少よろめたりするが、自力で足で立てるようになっていた。 地下に入り、地上への扉を閉じる。 微かに聴こえる住人達の話し声が、私達だけじゃないということを再確認させた。 「もう少しよ、お父様」 長い廊下を、歩き始めた。 妹の部屋まで数メートルと差し掛かった頃、後ろで叫ぶ声がした。 「その怪我は一体……?」 その声に二人は後ろを振り返った。 「案ずるな、……この通り、生きてるよ」 後ろには、館の住人達全員がいた。 魔法使いや魔女、使用人が伯爵とレミリアを見守っていた。 その住人達の温かさに二人は微かに微笑み、 「久々に全員が揃った」 伯爵は皆一人一人を見回し、そして笑った。 「君達が不安な顔をすると私まで気分が優れなくなるじゃないか」 その一言に、皆の緊張が解れていく。 こんなにも人望が厚いのはやはり、この人柄なのだろうと伯爵の娘は思った。 この事態を、あのやり方で解決しようとした伯爵。 誰も、憎めない、そんな、 吸血鬼らしくない、吸血鬼なのだ。 「不安なら私についてくればいい、今から娘の部屋に行くところだ。どうだ、ついてくるか?」 皆、頷いて伯爵に寄り添い、笑顔が灯った。 こんな事態なのに、伯爵は刺されたのに、 こんなにも、温かいのはきっと 伯爵の、父の、力なんだろう。
「……パチェ」 眼前には幾重にも書き連ねたヘキサグラム。その中心に魔女、パチュリーが本を片手にスペルを唱えていた。 「もしかしたら、目を覚ますかもしれないの」 レミリアが伯爵含め後ろについてきた皆に対して言った。 伯爵は目を見開き、期待の眼差しで魔女を見つめる。 魔女は静止していた。 身動きせず、ただ淡々と韻を含んだそれは、とある魔法使いがまさか、と呟いた。 彼女は、あの賢者の石を、発動させようとしている。 幻の秘術が、今まさに発動されようとしている。 各々が息を飲み、その完成を待ちわびていた。 魅入っていた、その光景に。 魔力が渦巻き、肌がぴりぴりする。 七色の属性が渦巻き、この部屋を支配する。 ──その時まで、気付かなかった。 伯爵の血が流れていたことに、 「─────」 地下を発見し、騎士達が私達の後ろで剣を構えていたことに。 ───後ろで、叫び声が聞こえた。 一瞬、文字通り皆が凍りついた。 何でここに奴等がいるのか、と その疑問も吹き飛ばし、爆ぜた。 「教会の奴らが来たぞ!!」 「伯爵を守るんだ!!」 「我等も立ち向かうんだ!!」 胸が熱くなる。 「皆逃げて!!私が──」 レミリアが叫ぶ。 「大丈夫です、お嬢様に指一本たりとも触れさせはしません」 魔法使い達が魔法を放ち、部屋と廊下を越え、戦場と化した。 魔法は騎士を死に誘い、騎士の剣は詠唱中の魔法使いの心臓を貫く。 遠距離からの魔法で、少しだけこちら側から有利だった。 いやそれよりも 「やめなさ───」 「やめてくれ!!」 父の怒号が響き渡る。 その怒号に魔法使い、騎士達までもが剣を降り下ろすのをやめた。 「もう、人が死ぬのはみたくないんだ」 「伯爵……」 「あの悪魔、何をいっているんだ!」 「これは罠だ、うろたえるな!!」 騎士達が我に返り剣を降り下ろす。 その刹那、 「扉を閉めるんだ!!」 剣は扉に突き刺さり、騎士達を廊下に閉じ込めた。 いや、閉じ込められたのは私達か。 それでも伯爵の判断は間違っていなかった。 絶妙なタイミングで魔法使いたちが魔法で扉を強化し、鉄の頑丈な扉と化した。 幸い、刺された魔法使い数名は致死には至らずなんとか一命をとりとめた。 そして、伯爵は悲しげに低い声でこう言った。 「皆に、言っておきたいことが、ある」 「伯爵……?」 伯爵は動かなくなった腕を擦りながら、 「私の腕は……もう動かないんだ。それ、にもう長くは、生きられない」 そう短く、言った。 レミリアは立ち尽くした。 腕が動かない、病気?そんな訳は無い筈だ。 なら、ならば、嫌だ、そんなことは、 それは住民達も同じ気持ちだった。 まさか、嘘だ、という呟きが聞こえた。 「どうやら、私は夢を見すぎたのかもしれないな」 つまりは、段々体の機能が失い、最終的に死へと向かう。 そう、寿命が近いという事を意味する。 レミリアは戦慄した。 この事態が過ぎればなんでもないただ平和な日々がやってくると信じていたのだから。 優しい父が、死ぬなんて考えられなかった。 それこそ剣で刺されてもなお笑ってみせた父が死ぬはずがないのだと、どこかで信じていた。 「騎士達は、私が、止める」 終止符を打つために。 「お止めください、伯爵!!」 住民達が叫んだ。 「私達は伯爵に命を救われたと言っても過言ではない、私達を拾ってくれたその日から伯爵に忠誠を誓ってます」 「だが、」 「だから今度は私達が、伯爵、貴方をお守りしなければいけない」 「…………っ」 住民達の意志は頑なだった。 皆、伯爵の恩を忘れていなかった。 拾ってくれた伯爵を、温かく笑顔で迎えた伯爵を、忘れてなど、なかった。 「……ありがとう」 一言、伯爵は頭を下げて小さく呟いた。 「しかし……「──レミィ」 凛とした声が伯爵の声を掻き消し、部屋に響き渡った。 魔女はレミリアをちらりと見た。 「呪文が、完成したわ」 「賢者の石が――?」 「ええ、そうよ」 その賢者の石という単語にざわめきが起こった。 「──けど」 「けど?」 パチュリーは軽くため息をつき、こう述べた。 「七曜の属性を司るこの石は、七つで賢者の石とされるの。  彼女の朽ちた翼に使う石はバランスよくやらなきゃいけないわ、七つ、つまりは3:4であってはいけないの。  魔力の流れが不安定になって元通り。ましてや一つ残して六つ使ってしまえば賢者の石の力は衰えてしまい何れ力を持たなくなるわ。  ……私の魔力じゃ賢者の石を出来るか出来ないかのレベル。1:1に釣り合うようにもう一度やらないといけないのだけれど……」 「それで、娘は目を覚めさせられるのか?」 パチュリーは伯爵の方に向く、 伯爵の刺された傷を見て驚き、たじろぎ、何を言おうか迷ったが平静を装いいつもと変わらぬ口調で 「ええ、きっと」 と言った。 伯爵は感動したように声を震わせ、ヘキサグラム上の彼女に応えた。 「じゃあ、私がやろう」と。 そして、誰にも止めらぬまま伯爵はヘキサグラムの上に乗った。 「私に続いて」 「ああ」 部屋の中に緊張が走る。 ヘキサグラムが光り、部屋に魔力が満ちる。 レミリアは二人の光景を眺めていた。 ふと気になり、扉の方に向き直る。 この部屋に行けなくなったとしても、そこで諦めるような奴等じゃない。それこそ、命知らずの狂人だ。 すっ、と扉の方に歩き、 扉の向こうに耳をすます、 その時だった ――僅かに聞こえた、「これで崩れるぞ!」という騎士の声。 扉に手を触れるその瞬間、 "扉の周りの壁が崩れ去った" 崩壊音に、パチュリーと伯爵以外の住民達が振り替える。 そして崩壊音が消える前に、向こうから幾千の矢が降ってきた。 最初に動いたのはなんと住民達だった。 「お嬢様、後ろに!」 主を守る為にレミリアを後ろへと腕を引き、抵抗する間もなく、また交戦が始まった。 「私がやる──!」 その叫びもむなしく、部屋に響き渡る騎士と住民達の怒号に掻き消された。 ただ、私は見ている事しか出来なかった。

≫行間

───始まった。 紫のドレスを纏った金髪の女性が、無表情でその光景を"見て"いた。 そう、始まったのだ。 人間が勝つか、亜人が勝つか、 この時代の人間が変われば、"今"の人間は変わるのかしら。 ……あらやだ、何を考えてるのかしら。 「でも……」 騎士と住民達を見て一言。 「どちらに転がっても、約束は守るわ。私の友人。」

≫第五章

茫然、としていた。 耳の鼓膜が破れたかのように、キーンという音以外何も聞こえなかった。 騎士の唸るような叫び声も、魔法使いの断末魔の叫びも。 何もかもが、そこにはあるはずなのに、何も感じられなかった。 背後では、きっと二人がヘキサグラムの上で呪詛みたいに延々とスペルを言ってるのかもしれない。 もしかしたら、賢者の石が今まさに完成したのかもしれない。 確認しようにも、 足が動かなかった。 ヒトが死ぬ度に、血で満たされる廊下。 死体は、もはや肉塊と化し、山となる。 私の前でずっと守ってくれた年老いた魔女も、騎士達に向かっていった。 私は、ただ、茫然と、見ていた。 状況は歴然だった。 住民達と互角だった騎士達は外で待機させていた援軍を交えて突撃していたのだった。 生活に密着した魔法しか使わなかった彼らにとって、致死させる魔法を使える者は指で数える程しかいなかったのだった。 争いを好まない彼ら、だからこその敗因だった。 そう、敗因、だ。 「お嬢ちゃん、そこ通してくれねぇかなぁ?」 私はおかしいのだろうか。 身内の死体を見ても、何も感じないのだから。 そこにあるのは"無" 胸にぽっかり穴が空いたような、虚無に支配されたただの傀儡。 ───でも、 「どかないなら───」 ──この、異常なまでに透き通った感情は、……怒り? 悲しみすら越えてしまったのかもしれない、 もしかしたら 麻痺するぐらい感情が高ぶったのかもしれない。 ──でもそんなの、 「どうでもいい」 聞こえないなお嬢ちゃん、 そう言おうと騎士は屈んだ。 それが、仇となった。 レミリアは小さな握りこぶしで騎士の甲冑を砕き、右からの強烈な蹴りで脊髄を砕き、騎士を絶命へと至らせる。 返り血に染まり、鉄の匂いが充満する廊下に、ざわめきが起こった。 幼い少女が一介の騎士を殺したのだ。 が、そのざわめきも一瞬で収まり、レミリアに向かって突撃していった。 レミリアも地を蹴り、蹴散らすかのように次々と、騎士達を殺していく。 返り血にドレスが紅に染まり、肌も鮮血に染まった。 一人、また一人と、息の根を止めていく。 少女は、槍に刺されても、剣で切られても、戦い続けた。 目に涙を浮かべながら。
「完成したわ」 パチュリーがふう、と息を吐く。 賢者の石が完成した。 これで、彼女を目覚めさせられる。 傍らにいた伯爵は疲れたのか、彼女のいるベッドに横たわっていた。 それもその筈だ、私だって尋常ではない疲労が襲いかかってきていた。 最後に、私は呪文を唱え、 彼女の翼に賢者の石を吊るした。 後は、待つだけ。
「…………」 ゆっくりと、彼女は目を開けていった。 最初に感じたのは、光。 眩しくて、頭が痛くなりそうだった。 時間が経つと、そこには紫の髪をした女性が現れた。 何か、口をパクパクさせてるけど何を言ってるのか分からない。 「───」 「───ル?」 聴覚が、段々、感じてきたのが分かる。 この感じは、なんだろう。 なんだか、温かくて気持ちがいい。 「フラン……ドール?」 それが、きっと、私の名前。
私が彼女の名前を言うと、フランドールは返してくれた。 永き眠りから目覚めたのだ。 喜びのあまり、嬉し泣きしながらも、伯爵を起こす。 娘を一番見たかったのは、伯爵に違いない。 「起きて!」 体を揺すって、伯爵を起こす。 伯爵はぴくりとも動かなかった。 「フランドールが起きましたよ!」 さっきより強い口調で言った。 ……それでも、伯爵は動かなかった。 「嘘……、でしょ?」 パチュリーが伯爵の体を起こし、心臓の音を確かめる。 音が……、しなかった。 体を支えながら、フランドールの横に伯爵を移動させる。 フランドールは不思議そうにその光景を眺めていた。 純粋無垢な少女は、きっと分からないのだろう。 フランドールの横に寝かせた伯爵の顔は、安らかで笑顔だった。 嬉しいのと悲しみが、交じりあい、パチュリーは白いベッドに泣き崩れた。 親を親と知る前に、 目の前で死ぬという事実に、 少女はその現実を、 呪った。
「…………」 あたまのなかがまっしろ。 最後の騎士を槍で串刺しにし、レミリアは崩れ去った。 騎士達から見れば、真っ向から攻撃してくるレミリアには隙がありすぎた。 そのせいか、少女の体は槍が刺さっていたり剣で切られ、血がかなり出てしまった。 「…………」 あたまがいたい、 ちをながしすぎたかしら、 血で湿った紅絨毯に突っ伏し、ぜーはーと呼吸は荒く、目は虚ろだった。 「…………」 あれは、だれ ? レミリアはふっと糸が切れたように、 目を閉じた。

行間

「もうすぐ夜明け、ね」 鉄の臭いがする廊下を、すっと女性は歩く。 「……あら」 しばらく歩くと、そこには吸血鬼の娘がいた。 薄紅色のドレスが、血で紅に染まった姿に息を飲む。 女性は娘に手をあて、死んでいない事を確かめたうち、廊下から続く目の前の部屋に足を踏み入れた。 ──天蓋付きの白いベッドには三人の姿があった。 一人は吸血鬼の娘、 一人は七曜の魔女、 一人はこの館の主。 娘と魔女は疲れたのか、寝てしまっていた。 魔女の方は目元が赤く、きっと泣いたのだろうか。 館の主は、吸血鬼の娘の隣で息もせず寝ていた。 優しい顔をして、嫌いなものなんてないような、そんな吸血鬼だった。 「スカーレット、貴方はそれでよかったのかしら」 ああ、そうよね。 「いや、それが貴方の道なのね」 女性は深呼吸をして、傘を閉じる。 「約束は必ず果たすわよ」 ゴゴゴと、地響きが起こる。 館全体が、震え、窓ガラスが割れていく。 館は黒い空間に呑まれ、跡形もなく消していく。 「さて、と」 くるり、と女性は振り向く。 「貴方の為に、私の為に、確実にこの館から屑共を消してあげるわ」 薄く、笑い、女性は部屋を後にした。 「幻想郷に貴方達はいらないの」

≫最終章

「───起きて!」 「─ミィ起きて!」 「レミィ起きて!」 パ……チェ? 「あなた……誰?」 「……!」 レミリアが目を醒ますと、目の前には自分の妹がいた。 純粋無垢な少女が目の前には立っていた。 翼には賢者の石を携え、キラキラと輝いていた。 ハッとして、自分のドレスをみる。 血で染まったドレスや血でこびりついた肌はそこには無かった。 あるのは薄紅色のドレスに純白の綺麗な肌。おまけに、傷も塞がってるではないか。 一体どういうことなの? と考える前に、レミリアは自分の妹に精一杯の笑顔で、 「私は貴女のお姉ちゃんよ」 「お姉ちゃん……?」 「そうお姉ちゃん、血の繋がった姉妹。家族よ」 「……家族」 そうだ、父はどこにいるのかしら。 妹を一番に見たかったのは父の筈だ。 部屋を見回すと、父は簡単に見つかった。 妹が寝ていたベッドに、一人、父は寝ていた。 「起きて、妹が目を醒ましたのよ!」 体を揺すり、父を起こす。 その体を触った瞬間、レミリアは驚いた。 体が冷たいのだ。 「……えっ?」 ゆっくりと父の胸に自分の耳をあてがう。 そして消え入りそうな声で、こうもらした。 「嘘……、でしょ……?」 一番に妹を見たかった父が、 一番に人を愛していた父が、 死ぬわけ、無いのだ。 「……ごめんなさい、私のせいだわ」 後ろで、パチュリーが静かに、けれどハッキリした声でレミリアに言った。 「ううん、"お父さん"は他の魔法使いに賢者の石を作らせなかったと思うわ、だからパチェは悪くない」 そして、少しの時が経ち。 「――もう、終わったわ」 終わった。何もかも。 全てが。 「………皆を土葬するには労力が必要だわ。火葬にしましょう」 レミリアは立ち上がって、後ろの二人に云った。 「レミィ、貴女それでいいの?」 「それでいい、その方がいいわ」 「この部屋自体、燃やすわ」 レミリアは薄く笑った。 未練も無いし、すぐ燃やさなきゃ気味悪いし情が移ってしまうじゃない、と パチュリーはそれを嘘だと見抜いた。 意地っ張りでプライドが高い彼女だからこその、嘘。 「後悔は……しない?」 「……ええ」 なら、と魔女は彼女の妹を連れ部屋に出ようとする。 「待って」 レミリアがそんな二人を止め、 「少しだけ、一人にさせて。……燃やすのはそれから」 「分かったわ」 そして、パチュリーとフランドールはこの部屋から出ていった。 レミリアは出ていったのを見届けると、 拳を握り締めて、静かに泣いた。
パチュリーは廊下の光景を見て、さっとフランドールの目を手で覆った。 「ん……?」 「少し我慢してね」 酷かった。 鎧はあるのに"中身は"無いのだ。 それなのに、血の臭いが充満していた。 そんな不思議な光景に魔女はぞっとした。 レミリアには中身だけ消すという能力も技術も無い。 つまりは─── 「……ここ、やだ」 「そうね、外に出てみようかしら」 ――何者かがいたということ? 鎧の群れをかき分け、地上へと二人は歩いた。 何故、地下への道がバレたのか分かった気がする。 パチュリーは地上に出てその原因を見てそう感じた。 伯爵のあの刺された傷口から血が流れていたのだ。 騎士達はそれを辿って来たのだった。 迂濶、なにか魔法で入れないようにすれば良かったんじゃないかと思う。 地下とは対称的な綺麗な洋館に、目を覆ってた手を戻すとフランドールは驚いた。 きっと朝を迎えたのだろう。 廊下は暗くなく、エントランスから漏れる白く輝く日光が見えた。 そういえば、フランドールも日光は危ないんじゃないかと思い、歩いていた足を止める。 そのフランドールは突然足を止めたパチュリーに首を傾げる。 そうだ、元図書館の部屋に行けばいい。 あそこからの外の眺めは良いのだ。 「さ、こっちよ」 元図書館は荒らされた形跡も無かった。 本も少ししかなく、空き部屋のようなこの部屋は騎士達も見逃したのだろう。 そして、窓から漏れる光にフランドールは目をぱちぱちさせ、慣れてきたのか二人は段々窓に近づく。 「痛かったら、言ってね」 「ちくちくするけど、平気」 「うーん……、とりあえずそこにいなさいね」 「……分かった」 一人、魔女は窓のガラス戸を開けようとして、手を止める。 目を見開き、その出来事に驚く。 「どういうこと……?」 パチュリーはフランドールを連れて、レミリアの元に足早に向かった。 レミリアは部屋から出ると、そこに二人の姿は無かった。 地上に出たのかしらと思い、血の臭いを我慢しながら外へ出た。 生憎、騎士達を見下ろす真似はしなかった。 「レミィ大変よ!大変!」 「どうしたのよ」 「とにかく大変なの!こっちに来て!」 レミリアは何事かと思いながら、パチュリーに腕を引っ張られ、懐かしいあの図書館へとやってきた。 「窓の外をみて」 「やだ眩しいじゃない、それに日光は──」 「いいから!」 「……少しだけよ」 パチュリーに急かされるまま、レミリアは窓の外を覗きこむ。 レミリアの目の前に広がる光景に唖然とする。 まず、目に飛び込んで来たのは大きな湖。 そして、向こうに聳える山々。 たくさんの森林が広がっていた。 「ここ……どこよ……?」 「分からないわ」 館が移動した、のだ。 いつも見ていた館からの風景とは全然、似ても似つかなかった。 「ま、夜になったら外に行ってみるのも悪くないかも」 「日中は館から出れないし、火葬した後、掃除しないとね」 「ええ、そうね」 「存外、驚きはしないのね?」 「驚きというより嬉しいさ、けど今は何も感じないの。あまりに大きなことが立て続けに起こったから、受け止めきれない」 「正直いうと私もよ、レミィ。信じたくない自分がいる」 「それでも私達は生きてるんだ」 レミリアは伸びをして、欠伸をした後、パチュリーとフランドールに、さ、行きましょと言って部屋を後にした。 「掃除の得意な召し使いがいればいいのにね」 「同感ね、あと館を守ってくれそうな人とか」 「それいいわね、いちいち教会に怯えなくて済むわ」 そう言いながら、地下の廊下を歩き続ける。 フランドールは疲れたと言ったためレミリアの部屋に寝かせておいた。 この光景を見せてはいけないと二人は思ってたため都合がよかった。それにフランドール自身、初めての出来事が多すぎて疲労も半端無いのだろう。無理をさせるわけにはいかない。 「未練は無いかしら?」 「無いさ、悲しみに取り込まれたら終わってしまうわ」 パチュリーの風魔法で騎士達や住民達の亡骸を部屋に運び、 パチュリーは火葬する為に火を手に浮かべる。 「便利ね、パチェの魔法」 「それで家事全部任せるなんてしないわよね?」 「うっ、バレたか」 「ま、三人のうちは手伝ってあげるわ」 「ありがとね、パチェ」 「どういたしまして」 「んじゃ」 「ええ」 火が、ゆっくりと絨毯に落ちる。 火はゆっくりと絨毯を燃やし、大きな炎となる。 「さようなら、みんな」 全ての思い出に、さようなら。
火葬が済み、二人は部屋を後にした。 パチュリーの魔法で燃え広がらず、全てが灰となった。 パチュリーは骨でも遺しておきなさいよと言ったが、レミリアは首を横に振った。どうやら彼女なりの戒めなのか分からないがそういうことなのだろう。 血の嫌な臭いがする廊下を歩き、伯爵の部屋へと入る。 どうやら、騎士達は地下の部屋には入っていないらしい。 図書館同様、荒らされた形跡は無かった。 レミリアはここも燃やすと言ったが、パチュリーが制し、なんとかこの部屋は燃やさずに済んだ。 「なんで燃やすのよ?」 「出来るだけ思い出したくないしね」 「嫌でも思い出せなくなる時が来るわよ」 「……分かったわよ」 「あら、これは何かしら?」 パチュリーが何かを手に取る。 テーブルに置かれた、本? いや、 「ダイアリー……、日記かしら」 そこには日記としか書かれていない簡素な日記帳だった。 「まさか」 「伯爵の?」 二人は恐る恐る、日記帳を開いた。 『この日記帳で何冊目だろうか、物心ついた時から書いていた日記もこれで何回目だろうか。  そこは数えたくないので割愛しよう。  何故、今になってこんなことを書くか。  まあ簡単に書くならば、私の片腕は動かなくなったということだ。  確かにこの日記も更に書きづらくなる訳だ。  そして私自身の寿命が近いのだろう。  それは杞憂でありたいが、自分の体だ。自分が一番分かっている。  だから、これからは1日1日を大切にしていこうと思う。』 無言で、二人はページを捲る。 『今日は嬉しい事があった。  なんと娘のレミリアに同じ背丈くらいの友達が出来たみたいだ。  館には子供が少ないから寂しい思いをさせ続けていたから、レミリアが私に延々とその友達の話をしてくれた時は嬉しかった。  それを召し使いにいったら親バカですねと言われた。』 『今日は旧い友人が遊びにきた。  なんだかんだであいつは元気みたいだ。  片腕が動かないといったら驚いていた。  ふむ、この有り様じゃ館の奴等に言うのはまずいかもしれない。  余計な心配をかけてしまってはいけない。  とりあえず、今日は飲みすぎた。早く寝よう』 ――伯爵の日記が綴られている。 「ねえ」 「ん」 「最後の日記、読まない?」 「……そうね」 そして二人は最後のページを捲った。 『長きに渡る、この日記もこれで最後になるかもしれない。  遂に教会が私達を狙い、殲滅させようとするだろう。  先祖が国の奪還の為に戦ったというのにこの仕打ちはどうなのかと思ったが、世間は変わったのかもしれない。  時代は変わったのだろう。  教会は私を、私だけを狙っている筈だ。  つまりは私さえ死ねば、彼らは退くだろう。  それに、友達は私の頼みを聞いてくれた筈だ。  きっと今夜にでもあいつらを運んでくれるだろう。  私もその幻想郷とやらを見てみたいものだ。  そこは人間と亜人が仲良く共存している世界だという。  私にとってそれはまるで夢物語のような世界だろうが、彼女の事だろう、本当らしい。  なんでも、東の地に似た環境らしい。  ますます行ってみたいじゃないか。  まあでも仕方ない。  犠牲は最小限に済ませるならこの方が一番だ。   戦うという意見が大半を占めたが、相手は人間。私達と同じ魂をもつのだ。  人間にだって優しい者もいる。  分け隔てなく得た命は粗末にしてはいけない。  私が粗末にしてはいけない。と書いても説得力はないが、つまりはそういうことだ。  この日記を手にしたあなたへ。  きっと、ふとした部屋の掃除の時にこれを手にしたことだろう。  きっと、これが遺言になるのだから、今のうちに書いておこう。  きっと、そこは見知らぬ世界だろう。  それが日記に書いた、幻想郷だ。  驚いていた事だろう、不安だろう。  けど、しかし、安心して欲しい。  私は死してもなお、この館を見守っているのだから。  私が"視た"世界は皆が笑顔で暮らしていた。    私はそんな生活が大好きだ。  平凡でもいい、それが幸せだと私は思う。  だから、皆にも幸せに生きて欲しい。  最後にレミリア。  こんな父で申し訳ない。  けど、ありがとう。そんな私を理解してくれた。  友達を大切に、幸せになってくれ  ―――それが、最後の私の我が儘だ』 最後のページだけ、微かに、涙の跡が残っていた。  

≫Ending

「パチュリー様にもそんな過去があったんですね……」 小悪魔が呟く。 「ま、過去は過去よ今を楽しく生きれればそれでいいんじゃないかしら」 「はい……!」 「分かったならこの本の山を片付けてくれるかしら」 「はい!」
「おはよう、パチェ」 「こんばんは、レミィ」 「いや私の感覚じゃさっき起きたばかりで……ふわぁ……」 「夜風にあたりながら散歩もいいわよ?」 「ん、今日は満月だっけ」 「まだだけどそろそろな筈よ、まあでも今日は月が綺麗よ」 「ふーん、ま、ちょっと散歩してくるね」 「行ってらっしゃい」
レミリアは空を見上げた。 綺麗な、十六夜の月だった。 湖はきらきらと輝き、水面に移る月はとても幻想的だった。 「ん、なんだあれ」 湖の畔に誰かがいた。 暇な私はそれに近づいてみる。 もしかしたら強い奴かもしれない、そのときは私を楽しませてくれる筈だろう。 そっと、近づく。 近づいてみると、それは寝ていたようだ。しかも少女。 なんだか不思議に思いながら、まあでも幻想郷だしと自己解決して少女を起こす。 いや起こしそうとしたら起きた。 「ぁ、起きた」 「貴女は……?」 「私?私は紅魔館の主レミリア・スカーレットよ」 そして、久しぶりに吸血鬼の少女は笑った。
fin...

≫あとがき

なんだかんだで、紅魔館シリーズ三作目ですね。 紅魔館の方々は個性豊かで書きやすいです。 地霊殿やら星蓮船の話も書きたいところですが、作者のパソコンのスペックのせいでプレイ出来ずじまい。 原作やらないと書けない人なんですごめんなさい。 緋はなんだかんだで書いてませんね。 さて、解説みたいなものは次から。 今回は、紅魔館の元、主を書かせていただきました。 本編の主人公は、パチュリーと伯爵。そしてフランドール。 ツェペシュの幻想は、 伯爵の日記に書かれていた、誰もが平和に生きる理想郷、つまり幻想郷です。 (ただ、求聞史記にはスペルカード制定前後に争いが絶えなかったという記述があった気がします。まあそこは二次設定ということでお許しを) ちなみに、今回の殺す描写は簡単にしました。 というのも、圧倒的な力の前には屈せられないというのがありますからね。 例えるなら、 蟻を踏み潰した時でしょうか。 蟻を殺したという事実よりは、どこか軽い印象を与えます。 まあ蟻という印象が印象なだけありますが、妖怪にも人間なんてそんなもんなんでしょうね。 エンディングを見ていただいた方は薄々感じた気がするかと思いますが、 エンディングは短編集の不完全な満月の部分です。 この時、咲夜の手を握り、咲夜の過去を垣間見て、自分と同じ境遇なのだと気付きます。 彼女達は、守られ、守ってくれる人達が無惨にも死んでいくさまをただ、見ることしかできませんでした。 その共通項を見つけ出したレミリアはどこか咲夜の事が気になってきます。 まあそこは不完全な満月を。 なんだかんだでこの短編集も違う話から伏線を拾っています。 まあ世界が同じですし、舞台は限定されますからね。 ともあれ、この短編集もあと二つ三つの話で終わりを迎えると思います。 その終わりは、作者の制作意欲や話が書けないとかそういう意味ではなく、 東方短編集〜TheAnotherStoryという、一つの話として完結するということです。 これからの話はこの短編集を書きはじめる時から、考えていたもので、 東方短編集の特徴である"俺設定"が強烈な話です。 そこはまず最初に謝っておきます。ごめんなさい。 ともあれ、最後まで、応援よろしくお願いします。 ……まあ、まだまだ先のような気がしますがね。

 

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