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 今と過去の邂逅



≫第一章


夢と現。
途切れた記憶。



「遅刻するなよー。んじゃまた明日ね、メリー」
「あなたが遅刻したんじゃないの……。まあいいわ、またね連子」

いつも交わされるさよならの言葉。



―――これは、途切れ途切れだが大切に紡いできた私の記憶である。 





私の名前はマエリベリー・ハーン。 呼びにくいからメリーと呼ばれてる。 私には超能力みたいな力を持っていて、空間の割れ目みたいなモノを視る事が出来る。 友達の宇佐見蓮子は空を見上げただけで時間が分かるみたいだ。 蓮子みたいな便利な超能力を持っていても、遅刻の常習犯だったりするのだけど。 秘封倶楽部。 私と蓮子で立ち上げた大学のオカルトサークルだ。 内容は複雑そうでいたって単純。二人で不思議な場所にいったり幽霊スポットに行ったりしている。 話は飛ぶけど、私が視る事が出来る空間の割れ目。 その先の向こうに行ったことがあった。 夢の中でだけど、何もかもがリアルで、蓮子も連れて行きたかったくらいに。 そして、気付いた。 その世界は一昔前の日本に似ていたのだ。 蓮子にこの話をしたら目を輝かせながら聞き入っていた。 私にしかその世界に行けない。という事が無ければ今すぐにでも連れて行ってみたい。 まるで子供が秘密基地を作った時のような、そんな感覚。 けれどそんな秘密基地は夢の中でしか存在できない。 現実味も無いし私でさえ疑う時だってある。 それでも蓮子が目を輝かせて聞くものだから話してしまう。 ――が、最近どうもおかしい。 「疲れてるのかしら」 向こうの世界に行く事が多くなっているのだ。 普通の夢もみていたが、その頻度は少なくなってきていて。 空間の割れ目じゃ、より確かに視えるようになってきた。 ……そうだ、疲れてる。 自分の言葉を反芻して、納得させる。 昨日は折角の休みを削って、連子と新しい電車に乗って青い海を見に行ったばっかりだから だから、疲れているのだろう。休めば大丈夫。 「ふぅ、やっと着いた」 気付いたら日は落ちていて辺りは薄暗い。 子供たちの喧騒も消え、鴉の寂しげな鳴き声が聞こえていた。 今日は早めに寝ようかしら。 そんな事を思いながら家の鍵を差し込む。

―――ここから先の記憶は曖昧 本当に寝たのかもしれない。 ……少し先の記憶へ。

「ここは、何処かしら……」 あれから何ヵ月も後の事だった。いやかもしれない。 自分が、向こうの世界に徐々に溶け込んでる事に気付いた。 つまり夢の中と理解出来ていたが、今では現実と区別出来なくなっていた。 逆に現実世界が夢のような感覚に襲われてしまう。 なんとも言葉に出来ないような感覚、それがもどかしい。 蓮子がいる時は、それが現実と理解できる。 ――そんな極限まで私は求めていたんじゃないのに。 そして辺りを見渡す。 木々が生い茂っていて、夜なのだろうか、とても暗かった。 周りの印象から、それが森の中にいるらしいということまでは理解できた。 待っていても埒があかないので歩いてみる事にする。 土の匂いがやけにリアルで。 雨上がりのような、清清しさがあった。 そして、ふと夜空を見上げる。 満天の星と満月が煌々と輝いていた。 私の世界には無い美しさが、この世界にはあった。 森を抜け、小高い丘の上に立ち、辺りを見渡す。 辺りは山と草原しか無かった。それ以外は何もなく、目の前には大きな自然だけが鎮座していた。 「……まるで昔話の世界」 丘の上に仰向けになり、夜空を眺める。 そよ風が気持ちいい。こんな場所は悪くないと、微笑んでゆっくりと目蓋を閉じる。 いつしか私は眠ってしまった。 その世界に別れを告げて 。

「メリーどうしたの?」 「どうもしないわよ」 大学の講義が終わり、帰りの喫茶店にいる時の事だった。 二人で特大のパフェを注文した後、不意に蓮子が訊いてきた。 「それになんだか疲れてる気がする。ちゃんと休んでる?」 「ちゃんと休んでるわ」 「無理、しないでね」 「うん……」 なら良いけどさ、ねぇノート見せて! と、いつもの会話へと戻る。 何気ない、日常の会話をして盛り上がり、そして家に帰る。 もしくは、その帰りに蓮子の言うオカルトな場所に行ったりする それが大学の講義が終わった後のお決まりのパターンだった。 今日の蓮子はどうやら後者みたいだ。 まさか二人の運命を変えるとは、誰しも予想だにしなかったであろう。 「ねぇメリー、今日は古い神社に行ってみない?」 二人すら、そんな結末を考えてなどいなかっただろうから。



「ねぇ、薄暗いしなんか怖いわ……」 「もう少しの辛抱だって」 蓮子は私をお構いなしに前へ前へ進む。 こんな暗いところで一人にはなりたくないので仕方無く蓮子についていく。 「あ、見えた見えた」 それはとても小さな神社だった 人のいる気配も無いし、どこか寂れていて何故か悲しくなった。 悲しくなった?ううん、違う。可哀想だと思った。 「ねぇ、連子早く帰ろ」 「えー、せめてお賽銭くらい入れていこうよ」 「んじゃお賽銭入れたらすぐ帰るわよ」 「仕方無いなぁ」 「さ、はやくはやく」 こういう心霊スポットには本当に弱い。 幽霊は信じてないが、何故か怖い。 私の第六感がそう告げているのだから、仕方ない。 「そういえばここって何て言う神社かしら」 思い付いた疑問を言ってみた 「確か……ハ……ク……――。ああ……博麗神社ね」 「博麗神社……。」 話をしてると神社の境内に足を踏み入れ、賽銭箱がある場所まできていた。 元は良質な木材で作った賽銭箱だったのかもしれない。 その賽銭箱を繋げる金具が錆びていて、今にも取れそうだったり、 賽銭箱自体が、いつ壊れても分からない。それほどまでに、寂れていたのだった。 「とりあえず百円でも」 ――チャリーン そして蓮子は手を合わせる。 幾ばくか、私は見ていた。 「……って、ちょっといつまで手を合わせてるの?」 連子は動かない。まるで時間が止まったかのように。目を開けない。 「おーい、蓮子ー? ねえってば」 聞いていない、というか聞こえていないようだ。 そしてその違和感に気付く。 「―――っ」 頭に頭痛が走った。 痛みを堪えながらも辺りを見渡す。 止まっている木々、止まっている風。 「まさか、時間が止まっているの……?」 そんな有り得ない現実に、戸惑う。 すると私を中心に空間の裂け目が出現していく。 無作為に放たれているそれは徐々に私へと狙いを定めて――。 「どういうこと……? ねぇ連子、助けて!」 その言葉も彼女の耳には届かない。 裂け目がどんどん広がり、足元が裂け目の中に入ったと気付いた時だった。 心臓が擽られるような、もどかしい感覚。 そして、地に足が着いてない状態。 「きゃあぁぁあっ―――!!?」 メリーは空間の割れ目の中に落下した。 夢の中でしか、有り得ない筈の世界が、今まさに現実を飲み込んでいく。

―――そこからのある一定の記憶が無い。 ……きっと気を失っていたのだろう。

気付いた時には私は"あの世界"にいた おもむろに腕時計を見てみる。 「止まっている……」 腕時計の針が止まっていた。これじゃ正確な時間が分からない。 辺りを見渡す、オレンジ色の太陽が山に沈もうとしている 空は朱と青で混ざりあったグラデーションがとても綺麗だった。 「こんなときに連子はいないのよね」 それでも、はっきりした時間はよく分からないが、空を見る限り夕方ということが分かった。 「これからどうしようかしら」 今までは夢から覚めれば向こうに戻ってこれた。 が、今回は少し違う。 何よりも現実で起こった世界。私は"起きて"いる。 「でも……」 地面に倒れて空を仰ぐ。 紫色に染まる空に、一番星が輝いていた。 「ここも悪くないわね」

気付くと日は沈み、夜空には星が輝いていた。 技術が進み、自然が破壊されていく私の世界には滅多に見ることのない星たち。 星の輝き以上に街は明るい、だからこそ星たちは居場所を失った。 私は、もしかしたらとんでもない世界にいたんじゃないかと思う。 「……」 目を閉じて風を感じる。 耳を澄まし自然を感じる。 何故だろうか、急に睡魔が襲ってきた。 そんなに私は疲れていたのだろうか。 ――もしかしたら、帰れるんじゃないか。 そんな淡い希望を胸に秘めて私は眠りに落ちた。

≫行間

「霊夢、貴女は人間は妖怪になると思う?」 お茶を飲んでると、後ろから紫が話しかけてきた。 ……いつものことだから面倒で振り返らなかった。 「さあね、なるんじゃない?」 面倒なのであまり考えずに返す 「じゃあ人間から妖怪になる為の条件は何かしら?」 「知らないわ、そんなの考えたこと無いし」 「何かしら人から外れた能力を持ってたら妖怪かしら」 「さあね、知らないわ。まぁでも、能力を持つ人間って滅多にいないし。そんな事言ったら私だって妖怪にされちゃうわ」 「…………そう」 突然、後ろの気配が消えた 「紫……?」 気になって振り返ってみても紫の姿は無かった。

≫第二章

あれから一週間が経った。未だ元の世界には戻れない。 朝、目を覚ましてもそこは私の知らない世界だったし。 人影など何処にも無かった。 私のいる場所の近くには森があり、果物が沢山なっていたので食べ物に困るという事にはならなかった。 ……寧ろ食べ過ぎたかもしれない。

「……っ」 眩しい。 もうそんな時間かしら。 かろうじて目を開けて立ち上がる。 光に慣れてないせいか周りがよく見えない。 ……ああ、今日は何をしようかしら。 軽く伸びをして深呼吸をする。 今日も清々しい朝。目覚めは悪い。 周りの風景を眺めながら目を慣らしてるとお腹が鳴った。 恥ずかしくてお腹を押さえながら周りを見ても誰もいないわけで。 あっ、と声を漏らして寂しくなった。 「ま、先ずは食事ね!」 気を取り直して。私は食料を採るために近くの森に向かった。

森は元いた世界でいう西洋みたいな森だった。 針葉樹や果物が成る木が沢山生えていた。 茸も生えていたが、知識がないメリーにはどれも怪しく見えて、 とても食べる気には起きなかった。 「赤い実は何処にあったかしら……」 甘酸っぱい味がする赤い実。 それを食べて過ごしてきた。 「あっ。あったあった」 高い所にある赤い実。 木を揺すっても落ちなかった。 ……木を蹴ってみたら落ちてきた。 赤い実を拾い、手で土を払いかじってみる。 「……美味しい」 今日もこの世界での生活が始まる。 食べながら森を抜ける。 目の前には丘があり、その丘から見る景色は壮大で美しい。 丘に着き、周りを見渡す。 草原が広がり、その向こうには大きな山々がある。 本当に人工的なモノなど何もなく、その人間でさえ私しかいない。 「そうだ、この世界を名付けてみようかしら」 ―――それは突然思い付いた事だった。       今思えば、なんでそういうことに至ったのか、分からない。 「理想郷……いや、違うわユートピアもなんかイマイチだし……」 自然、夕日、夜空 ここの世界の自然に感動していた。 まるで二人が夢見ていた、世界。 幻想の世界。 「幻想……」 あれ、どこかで聞き覚えがあるような。 そんなフレーズ。けれど思い出せない。 「幻想郷、うん悪くないわね」 幻想的な世界だから。 私はこの世界を幻想郷と名付けた。

幻想郷の世界に居るにつれ髪が伸びてきた。 そして自分の能力にも変化が起きてきた。 幻想郷でも空間の割れ目、境界が視えるようになってきたのだ。 ……もしかしたら、境界を越えれば帰れるかもしれない。 心の片隅にそんな気持ちがあった。 いや、寧ろ片隅にしかない私の気持ちに驚いた。 「私は此処に居たいのかしら……」 元の世界には無い自然や未知が広がっている。 私はどちらに居るべきか。 「ま、帰れるか分からないのに悩んだって無駄ね」 そう言って私はクスッと笑った。 なんだかこっちでもやっていけるような気がしたから。 そして幻想郷に来て1ヶ月のこと。 突然の出来事だった。
「おーい、起きろー」 ……誰? まだ眠いのに。 「起きろー」 寝かしてよ。起こさないで。 「おーい、人間?」 「……」 ……え? そこに、誰かいるの――? 目をゆっくり開ける。 寝惚け眼をこすりながら、眼前にいる何かを認識しようとする。 そこには大人の女性が立っていた。 ただ、私と違うのは頭に生えた二本の角があるということか。 それを再確認し、また目を擦り、頬をつねる。 「よ、人間」 「きゃあぁぁぁぁぁっ?!」 「わっ!?び、びっくりさせるなよ」 「あ、あ、あなた人間じゃない……」 「へ?……あ、ああ! そうだ私は人間じゃない。鬼だ」 そう言って鬼はにいっと笑った。 「お、鬼……?」 「ああ」 「本当に鬼?」 「ああそうさ」 段々、頭が冴えてきた。 メリーは考える。 幻想郷に私以外の人間がいた。あ、いや人間じゃない。鬼だ。 「つまり、貴女は鬼なのかしら?」 「人間、これで三回目だ。……まぁいい、ところでなんでこの世界にいるんだ?」 「神社にいったら突然空間が裂けて、気付いたらここにいた」 「ほう」 そう言って私は立ち上がる。 こうしてみると彼女の方がやや身長が高い。 「でもその前から夢でここに来てたのだけど」 「なるほど……。というと、もしかしてあんた妖怪か?」 「……は?」 何を仰る。 しかし妖怪とは聞き捨てならない。 「ああ、あんたは人間だった、変なことを言ってしまったな、すまない。……ただ、人間が特別な能力を持ってるってことが珍しくてね。とんだ災難だな」 「災難だわ。……まあでもここも悪くはないけどね」 「災難を引き起こしたのか、巻き込まれたのか。君はどっちなんだい」 「好きで災難なんて起こさないわ。私はね、空間の裂け目、境界を視る事が出来るの。その境界に落ちてしまっただけ」 「ほう、境界とな」 鬼は空を仰ぎクスッと笑った。 そして手を差し出し、 「これも縁かもしれない。よろしくな人間」

「そうだ自己紹介するの忘れてた。伊吹と呼んでくれ」 「私はメリーよ、よろしく」 改まって自己紹介する私達が可笑しくて、クスッと笑う。 ……そして伊吹という存在に安堵したのか、 堪えきれなくて我慢してた涙が溢れてきた。 「め、メリー?」 「ごめんなさい、此処に来てからずっと一人だったから……」 これは寂しかったから?嬉しいから?安堵したから……? よく、分からない 「……辛かったな」 伊吹が頭を撫でる 撫でた手がとても温かくて 「メリー、ここは貴女の世界」 伊吹が私の肩に手を乗せる。 「寂しいなら呼べばいい。得たいなら欲すればいい」 なんの事か分からないけど、その魔法の言葉は不思議と私を安心させてくれる。 「うん……」 「私は出来ないが……。メリー、君なら出来る筈だ」 そして伊吹はにぃと笑った。 それは希望を託す笑みなのか、未来を予見した笑みなのか。 それとも―――

あれから時間が経ち、いつしか日は落ち始めようとした それまで伊吹と色んな所を歩いたりした 「そういえば伊吹はこの世界に住んでるの?」 「いや、住んでない。この世界は今メリーと私しかいないと思う」 ……思考を巡らせる 「ってことは伊吹はどうやって此処に来たの?」 「結界、って言えばいいのかな。その類の術を使ったのさ」 「私も使えるかしら……?」 「メリーならきっと使えるようになるさ」 「……本当?」 「本当だ」 目を輝かせる私。 「んじゃ結界が使えるようになったら伊吹がいる世界に行くわ!」 「おお、楽しみにしてるよ」

≫行間

人間は歳月を経れば進化する。 それは能力も同じといえよう。 彼女、メリーは容易に境界を操れる事が出来るだろう。 世界は"言葉"によって構成され、"言葉"によって認識出来る。 境界も然り、 天と地、火と水、そこに曖昧は無い。ハッキリとした境がある。 ―――その境界を操る事が出来るのなら。 彼女は何でも出来る。 出来るが故に脆い。 が、それも私の杞憂かもしれない。 たまたま放浪した世界に来て、メリーに会えた。 それはもしかしたら凄い事なのかもしれない。 だから私はこれを書き残すとした。 願わくば、私の子孫がメリーと会える事を そんな馬鹿げた事、ある筈もないだろうが、 無いなんてことも否定できないのだから。 いくら、廻っても。


その後、伊吹と少しの間幻想郷で過ごした。 何故か分からないがこの辺りの記憶がぼんやりとしか分からない。 故に伊吹とのお別れの時、そしてその後の記憶が分からない。 ただ、一つ言えることがある。 記憶がぼやけてる向こう。 つまり、記憶がハッキリしてる所。 「私は、この境界を越える――。」 そこから。 "私"の、第2の物語が始まったのだ―――。

 


「貴女は幻想郷が好きかしら?」 境内を箒で掃いてると後ろから紫の声がした。 なんだ、気にすることなかったじゃない。 「さぁね、考えたこと無いわ」 後ろを振り返る。 「じゃあ考えてみて」 「……」 幻想郷、か……。 「ねぇ紫」 「ん?」 空を見上げる。 澄み切った、青い空。 「じゃああんたは、幻想郷が好き?」 クスッと笑った、気がした。 「当たり前じゃない」

第三章

気付いたら私は其処にいた 広い野原の上に仰向けになって ここは……幻想郷かしら 長い間眠っていた……気がする ゆらり、と立ち上がる 足がふらつく ……周りを見渡す いつもと変わらない 私の幻想郷 「……そうだった、私は、一人だった」 伊吹と別れた後、私はずっと寝てたのかしら? (得たいなら欲すればいい) 伊吹の言葉を思い出す 「だったら、境界を弄ればいいのよ」 突拍子も無いその考えに私自信戸惑う "視"えるなら"弄"れる事も可能かもしれない 試しに、念じてみた 気象の境界を するとおかしなことに小雨が降ってきた。 「凄い」 ……私って凄い 「じゃあ空間移動とか出来たりして」 空間の境界を弄る すると目の前に一つの線、境界が出来た それを上下に広げ、人が入るようにする 境界の中は真っ暗。”どこかで”みたことがあるような、空間の割れ目。 とりあえず、行き先を決めなきゃ。 向こうに見える山の頂上を思い浮かべ、目を瞑りながら隙間の中に入っていく。 入った途端、風を感じた 目を開ける。 「……嘘」 目の前には私がいた丘の上の野原 山の頂上は風が吹いていた。 なんだか唐突に凄い事が出来て、笑いが込み上げてきた。 そしてあることに気付く 足りないのだ 何が? 「あれ……?」 記憶? 何かがぽっかりと抜けていた。 まるで中身がない、虚無感に、震える。 「私の名前は………」 何? なに? 私は何だったの――? ああ、そうだ。 「……忘れたなら名乗ればいいじゃない」
「八雲 紫……。よろしくね」 一人、笑みを溢す。 なんだか楽しくて仕方ない。 山の上から地上を見下ろす。 「一人だけじゃ、つまらないわね」 そう言って私は境界を弄った。 夢を叶えよう。私の夢を。

メリーとしての記憶が自分の記憶であると認識出来なくなったのはいつからだろう。 まだ私は何か忘れてる気がする。大切な何かを。 私は幻想郷に現実と幻想の境界をひいた。 無論、これは現実で"幻想"した事象や物質が幻想郷に"幻想入り"するというシステム。 が、無闇に幻想入りすれば外の世界均衡が保たれなくなる。 だから私は人間が幻想入りした時の対策を考えた。 それは、"幻想入りした人間に関わった記憶が消える"ということ 最初に幻想入りしたのは博麗神社だった。 訪れる人もいなくて、ただ朽ち果てるのを待つだけの神社。 ……なのにそれが妙に懐かしく感じられた

数十年も経てば人も集まる。 最近では"魔界"という所から妖怪が来たりする。 特に荒らしたりせず気ままにやってるようだ。 「今度魔界に行ってみようかしら」 幻想郷に村ができ、面白くなってきた。 私は私なりに動物を使役して間接的に人間の手伝いをさせたり、外の世界の人間を"神隠し"していた。 無論、外の世界に執着していない人間を狙って。

私は隙間を使い博麗神社に向かう。 「で、どうすればいいのよ?」 「貴女なら強力な結界を張れるでしょう?この幻想郷を守る結界を張って欲しいの」 神社に住み始めた巫女が私を胡散臭そうに見る。 「面倒だし、ずっと張るとなると管理も大変だわ。断る」 一蹴されてしまった。 私が結界を張ってもいいが、私がいなくなったときのことを考えるとこの巫女に任せた方がいいかもしれないと思っていた。 落胆する私の表情を読み取ったのか、巫女がはぁとため息をついて、言った。 「分かったわかった。私がやろうじゃない。ただ管理とか修復は几帳面なあんたに任せてもいいかしら」 「お安い御用だわ、ありがとう。」 外界から守るシェルター。 きっと、外の世界が滅びても幻想郷は結界が破壊されない限り生き続けるだろう。

「平和が何よりだわ」 そんな言葉を呟いて、煎餅を頬張る 「ちょっと、勝手に私の煎餅を食べないでよ」 「ちょっとくらいいいじゃない」 巫女が口を膨らませる それを見てクスッと笑う なにがおかしいのよ! いやなんとなく あーっ、また煎餅食べた 美味しいわね、この煎餅 楽しみにとっておいたのに…… まぁまぁ煎餅一枚くらいで怒らない怒らない うるさい、しかも二枚よ二枚! 「……ふふ」 日常的で平和な幻想郷。 ああ、これが私の望んだ世界なんだ。 ……私は、幸せだ

最終章


「ねぇ霊夢、幸せかしら?」 「何よ急に、……まぁ気ままに暮らせてるし。それなりに幸せだと思うけど」 「良かった」 「って、煎餅食べないでよ! 楽しみにしてたんだから」 「固いこと言わないの」 「むー」 私に食べられないように早く煎餅を食べていく霊夢。 それがなんだか可笑しくて笑ってしまった。 「懐かしいわね」 「何が?」 「ううん、何でもないわ」 あれから煎餅を一枚頬張り、隙間を使って外の世界に来ていた。 前に来たときより確実に進歩したその世界はあまりに"不"、いや"負"が存在していた。 「ま、経済発展には仕方ないのかしらね」 上空から地上を見渡す。 「……あれは…」 気になった場所に隙間を使って移動する。
……そこは墓地だった。 「なんでこの場所が目に入ったのかしら」 折角なので傘を射して辺りを歩く。この石の下には死んだ人の骨がある。 そんなことを思うとこの石は結界か何かの力でも持ってるんではないかと考えてしまう。 「あら」 目に止まったのは"宇佐見"という名前が刻まれた墓石。 「……宇佐見」 私はこの、宇佐見という人物を知ってる気がする。

「思い出せないわ」 その人物が幻想郷にはいない、つまり神隠しに関連した人物なのだろうかと考える。 だけどこの宇佐見とはそれ以上の何かがあった気がする。 「全く、記憶なんて宛にならないわね」 はぁ、と溜め息をして傘をくるくる回す。 墓石を眺めて、帰ろうとした時だった。 「……メリー?」

 


目の前の傘を射した女性に私は思わず友人の名を言ってしまった。 その女性は不思議な顔をしてこちらを見る。 「ご、ごめんなさい。人違いでした」 慌てて弁解する。 目の前の女性が私の友人なんてある訳無いんだ。 だって彼女は何年も前に突然姿を消した。 今更逢えるなんて、考えるだけ無駄なのだから。 でも、目の前の女性は私の友人の姿と重なって見えた。 きっとまだ生きていたらこの女性のように綺麗な人になっていたのかもしれない。 「あなた……、もしかして宇佐見さん?」 女性が私に訊いた。 艶のある声、そして寂しさが混じったその声。 「はい、宇佐見です。宇佐見連子といいます」 女性はそれを聞いて何か考え事を始めたらしい。 時折顎に手を当てて考えるポーズをしたりしてる。 進展が無いのでとりあえず私は当初の目的の墓参りをする 手を合わせ、花を飾る。 だけど私は後ろにいる女性が気になっていた。 もしかして、という希望と、 何年もの時間という空白の現実。 それが何重にも重なり、溜め息となって出る 全く、私は何をしてるんだろうか。 「ねぇ連子さん」 「はい」 「そのメリーって人、詳しく教えてくれるかしら?」 ほんとに、何をしてるんだろうか。 「メリーは私の友人、いや親友でした」 乾いた笑みで親友と私の話を話始める。 ―――昔、私とメリーで秘封倶楽部というサークルを作って、 世界の不思議な場所に行ったりしてました。 二人には特別な特技を持っていました、 私は空を見れば大体の時間と位置が分かる能力、 メリーは結界という空間の境界を視る事が出来ました。 仲が良くて、たまに喧嘩したり笑いあったりして、 楽しい日々でした。 が、ある日を境にメリーの姿を見なくなりました。 それは神社に行って帰ろうとした時のことでした。 突然消えちゃって、私はメリーが怖くて帰っちゃったのだと思いました。 けど、一週間、1ヶ月経つにつれ私は不安になってきて、 私はメリーの行きそうな所や家に何度も行って探しました。 ……でも、メリーを見つける事は出来ませんでした。 「で、そのメリーが貴女に似ていたのでつい……」 「なるほどね」 「そうだ、お名前は?」 「八雲 紫よ」 紫、か。 ひょっとしたらマエリベリー・ハーンという名前を聞けたら、と思った私が馬鹿らしい。 まだ私は何を期待しているんだろう。 いつまでも、私はメリーの"幻想"を追いかけているんだろう。 「ぁ、じゃあ私は帰りますね」 追いかけるのは、もうやめよう。 「それじゃさようなら」 「さようなら」 私は疲れたよ。

 

私は連子の後ろ姿をずっと見つめていた。 何故かは分からない。 ただ、見ておかないといけない気がしたから。 「メリー……、か」 宇佐見同様、聞いたことのある名前。 私の記憶はなんだったんだろう。 知らぬ間に都合の悪い記憶は消えてるのかしら。 ……? 私の起源はどこ? ――傘が手からするりと落ちる 私は何処から始まった? 「……ぁ、ぁ……」 私は誰"だった"? 「思い出した」

「連子……!」 私は走った。 帽子が落ちても、それよりも彼女を目指して走った。 私は連子に言わなければいけないことがある。 「……連子」 「ぁ、紫さん?」 すーっ、と深呼吸をする。 「私、色んな所を旅してるの」 「だから、そのメリーって人に会うかもしれないわ」 今の私は――― 「だから、もし会ったときの為に言いたいことあるなら私に言ってみて」 貴女の求める幻想じゃないから。 「いいんですか…?」 「ええ」 そう、それでいいのよ。 「……じゃあ」 私には私の世界。 連子には連子の世界があるから。 求める先の世界は同じだった筈なのに。 連子はにぃと笑ってこう言った。 私はこの言葉を忘れはしないだろう。 「幸せに生きてください」

幸せに生きてください その言葉を何回も頭の中で繰り返す。 何故だろう、涙が溢れ出てきた。 私、らしくない。 「分かったわ……絶対に、絶対にメリーに伝えてあげるから……」 「はい、お願いしますね」 連子は帽子を深く被り、言葉を紡いだ。 「ありがとう、……」 「連子」 今の私には、そんな資格、無いのかもしれないから。 「ごめんね」 笑った、気がした 「許してあげる」 私は忘れない 貴女がいたこと 私がいたこと 伝えた言葉は少ないけれど 私達はそれで十分なのだから……。

  


帰る途中、紫さんに呼び止められた。 傘や帽子が無い彼女はメリーとそっくりだった。 「……連子」 この声、懐かしい。 なんで気付かなかったんだろう。目の前にあったのに、近すぎて分からなかった。 伝えたい事……? 「幸せに生きてください」 だってそれが私の願いだから。 ずっといたいなんて我儘は叶わない。 だから、私はこの言葉を送る。 だって生きてれば、それだけで十分。 すると紫さんが涙を流した。 メリー、隠すの下手なんだから、 だから私も騙されてあげる。 何かあったか分からないけど。メリーと、また逢える日を信じて 私は待つよ、いつまでも 謝らないで、貴女は悪いことをしてないから だから私は笑う。 メリー、私は待っているから。 「許してあげる」 それはメリーなのか紫に言ったのかは分からないけど。 それで貴女が私を忘れないのなら。 私は宇佐見連子。 私の親友は、   大切な人はマエリベリー・ハーン。 私達の物語は終わらない。   ――――― fin...

Ending


「ねぇ伊吹、お酒持ってきたんだけど。たまには一緒に飲まないかしら?」 「紫から誘うなんて珍しいねぇ、あと苗字で読むのは違和感あるからやめてくれないかな」 「今日だけよ」 「むー、よく分からないけど・・・。まあ仕方ないなぁ」 萃香にお酒を注ぐ。 「お、ありがと」 「ねえ、伊吹」 「ん?」 「貴女には助けられっぱなしだわ」 「……え?」 「ううん、忘れて頂戴」 満月の下で鬼と妖怪は乾杯をした 初めて会ったあの時を思い出しながら――。

あとがき

如何でしたでしょうか? 今回はメリー=紫説に乗っ取って書いてみました いや、しっかし書くのが難しい…。 考えてたネタとか使えずじまいだったりで\(^o^)/状態。 でもまぁ、最後のシーンとか気に入ってます。 ↓書き終わった日 08/6.13 13日の金曜日。

 

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